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パートを掛け持ちしたら、言語聴覚士が楽しくなった。

※この記事は主に仕事を辞めたいと思っている言語聴覚士(以下STと表記します)の方や、現在の働き方にしっくりこないSTの方に向けて書いています。

ST学生さんや、STという仕事に興味を持たれた方には刺激が強い内容かもしれませんが、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

言語聴覚士を辞めたいと思ったことはありますか?

いきなりシビアな質問をしてしまいました。

というのも、XのTLでよく「ST辞めたい…」みたいなポストをたびたび目にして、心が痛くなったんです。
思わずいたたまれなくなり、先日こんなつぶやきをしました。

今日はこのつぶやきをもう少し深掘りした内容の記事を書いていこうと思います。

先に言っておきますが、キャリアに悩まれる人に対して、私は何がなんでもSTを続けた方がいいとは全く思っていません

心身ともに健康に働ける選択が正解だと思っています。
STの業務自体が楽しいと思えないなら、早めに新しい道を開拓したほうがいいと思います。
人生は有限ですしね。

けど、わざわざ資格取得まで至ったということは、少なからずSTをやりたい気持ちがあったからでしょう。
それなのに職場が合わないからという理由で自信を失ったり、STに向いてないと決めつけてしまうのは、どうなんだろうと思ったんです。

そこでお伝えしたいのは、一つの病院や施設で正社員としてずっと勤めることだけが、STの働き方ではないということです。

医療現場や介護現場って、特殊な場所じゃないですか。
極論言えば、ビジネスマナーよりも、その職場のローカルルールを弁えることの方が仕事上必要だったり。
縦と横のつながりそれぞれでパワーバランスが顕著だったり。
カルテ記録や勉強会が残業にならなかったり。

おそらく医療や介護の世界って、一般企業に勤める方がいきなり飛び込んだら、驚くことだらけだと思うんですよね。

もちろん職場によるとは思うのですが。

だから、勤め先との相性があると思うし、実際に入職前に想像していた世界とのギャップに疲れてしまう方も多いんだと思います。

そこで超個人的な意見なのですが、STのお仕事にお疲れ気味の方には、「時々ST」という働き方をおすすめしたいです。

ガッツリSTとして働くことをやめて、改めてSTの仕事が好きなのか、楽しいのか、やりたいのか、自分に問うてみる働き方に変えてしまうのもアリなんじゃないでしょうか。

STの仕事とその他の業種の仕事を掛け持ちする。
もしくはSTの仕事を掛け持ちしてみる。
そして、やりながら自分が求める働き方を探して、理想の形に調整していくということです。

もし、労働環境のせいでSTを辞めたいと思っているなら、一度今の職場を離れて、STの仕事の頻度を減らしてみるのは一つの解決法だと思っています。

この記事では主に、敢えて正社員でSTをしないことのメリット・デメリットをお伝えしていきたいと思います。

なぜパートを掛け持ちしようと思ったのか

現在私はSTとして3つの職場でパート社員として働いています。
なかなかイレギュラーな働き方ですよね。

ではなぜ現在の働き方に至ったのかをお話しする前に、正社員時代の振り返りをさせて下さい。

安定したルーティーンが漠然と退屈だった正社員時代

これまで私は「STを辞めたい」と思ったことはありません。
なぜなら、有難いことに職場には恵まれていたから。

かれこれ8年以上この仕事をしていますが、ほとんど残業をしたことはありません。
(周りの人が残っていても、自分の仕事が終われば気にせず帰るタイプ)

職場の人間関係で深く悩んだこともありません。
(新人時代はお姉さまナースが怖かったけど)

お給料面も、普通に一人暮らしをして、娯楽にお金を費やせる程度には貰えていました。

患者さんとの相性はもちろんありますが、ハラスメントやクレームの経験はありません。

なぜ自分がそこそこ安定したST生活を送れていたのか、自分なりに考えてみたのですが、一番は運良く平和な職場に就職できたから

そして無意識で、自分が居心地よく働けるような立ち居振る舞いをしていたからだと思います。

自分が楽に働けるように、それでもやりがいを感じられるように、都合よく周りの人に甘えていたんだと思います。

カルテの書き方は相当雑だったし(これは今でも時々やってしまう)、仕事の依頼をするときには人を選んでいたし、リハビリの内容や患者さんとの接し方で悩んでいても相談せずにそのままにすることもあったし…

とにかく、「自分が楽」を優先していました。

それでも患者さんの声を引き出して一方的なリハビリにならないように努力していたし、的外れな訓練内容をやっていたとは思わないし、訓練効果を感じられる場面も多々ありました。

だから患者さんファーストで、一生懸命STをやっていると当時の自分は思っていたんです。
STの仕事自体も好きでした。

けど、基本的なマインドが甘えだらけで仕事をしていると、だんだん仕事がルーティーン化していきました。

要は意識が低いんです。
勉強会や学会に自ら参加することはあまりありませんでしたし、論文も必要な時にしか読みませんでした。

新患を受け持つことになっても、いつもの評価、概ねパターン化した訓練プログラム、カンファで話す内容も似たり寄ったり。

ぬるま湯に浸かっていたと思います。

そんなルーティーンになんとなくモヤモヤを抱えていました。

加えて、辞めようとは思わないにしろ、「一生このままSTをやっていくのかな」という漠然とした疑問はありました。

専門職であるが故に、自分はこの先ずっとSTをやっていくつもりではいたけれど。

ただ、OLの友達から転職や部署異動の話を聞いたときに、新しいキャリアを歩み始める様子が少し羨ましいと思う自分もいました。

STをやめて一般企業で働くという選択肢は全く考えられませんでしたが、企業勤めへの憧れみたいなものは少なからずあったんですよね。

それは、経験的な意味だけでなく、給料面的な意味でも。

リハ職のお給料問題

結論から言いますと、ST含めリハ職は、(きちんと職場を選べば)そこそこの生活ができる程度のお給料はもらえるお仕事ではあります。
ただ、お金持ちになりたい人がなる職業ではないですよね…

そして業務内容や業務量にお給料が見合っていると思えるかどうかは、個人の感覚と職場によりけり。
これはどのお仕事にも言えることとは思いますけど。

リハビリの効果があったかどうか、どれだけ担当者がいるかなど、業務の内容、質や量がお給料に反映されにくいのも、モチベーションが上がらない理由の一つなのではないでしょうか。

役職についたり、資格を取ったりすれば昇給は可能ではありますが、著しく大きなものではありません。
大幅に収入を上げるのであれば、一般企業に就職したり、個人で開業をするといった道を選ぶ必要があります。

そのほかにも海外で働いたり、大学教授を目指す道もありますが、かなりハードルが高いですよね…

ちなみに私は正社員として今まで2ヶ所の職場で働きました。

新卒から5年間は関東地方の病院に勤め、引っ越しにともない地方の介護老人保健施設(以下老健と書きます)に転職したという流れです。

地方ということもあり、お給料は前の職場よりも当然ながら下がりました。
有給もリセット。

経験年数に見合ってないな〜前の職場で働いてたら、もっともらえてたのに。有給も結局消化しきれなかったし…(涙)
というのが、転職当時の正直な気持ちでした。

そして、「いずれまた転職をする機会があったら、同じようなことの繰り返しなのか…」と思い、ため息をつきたくなりました。

とはいえ、転職先の施設でのお仕事が楽しかったし、病院時代よりもやりがいを感じられたので、働いているうちに給与面への不満は薄まっていったんですけどね。

働き方を変えるきっかけ

二ヶ所目の就職先の老健で働き始めて3年目のタイミングで、家族の事情で引っ越しを余儀なくされました。
当然ながら職場を変えなければいけないわけです。

しかし前述の通り、施設の仕事が好きだった私は、思い切って上司に無理な提案をしました。

「遠方からの出張の形にはなってしまうのですが、引き続きここで働かせて下さい!」

ジブリ映画のワンシーンを思い出してしまうようなセリフです。

通らないこと覚悟での申し出だったのですが、私の突拍子もない提案に驚かれはしたものの、すんなりと受け入れてもらえたんです。
ありがたすぎる話ですね。

この一件をきっかけに、正社員をやめてパートの形で引き続き施設で働くことが決定しました。

このエピソードについては、こちらの記事で詳細を書きましたので、よければ併せてご覧ください。

そんなこんなでパート掛け持ちを必然的にすることになったのでした。

パート掛け持ちSTの働き方

あくまで参考までにですが、今の私のお仕事について紹介いたします。

ちなみに、ここまで偉そうな口をきいていましたが、パート掛け持ちを余儀なくされてから半年間、STとして働いていたのは老健のみでした。
やっと最近になって、もともと思い描いていた働き方に近い状態になってきたところです。
所用期間は一年弱。

時間がかかった理由は、私の怠惰さ。これだけです。
(どのように働き先を増やしていったのか、なぜ時間がかかったのかはまた改めて別の記事でお伝えしたいと思います)

現在の私のワークシェア(2024年8月現在)

現在私は、STとして3つの職場で働いています。
内訳は以下の通りです。

  • 老健(入所+通所) 週2〜3日

  • 訪問リハ 週0.5日(3件)

  • 児童発達支援事業所 週2日

プラス副業でライティングのお仕事をやっています。
個人としてやっているのが、ココナラのサービス。
依頼を受けるのは、こちらのお手紙ライティングがほとんどです↓

あとは継続案件でブログライティング関係のお仕事を担当しています。

時々、面白そうな単発案件があったら応募もしていますが、現在頻度は低めです。
(本業と副業の継続案件で仕事量がちょうどいいくらいなので)

今後、オンライン療育サービスも担当するかも…?という話もあがっていますが、これはまだ未確定。

以上が現在の私のお仕事の内訳です。

パート掛け持ちのメリット

現段階で私が感じているパート掛け持ちのメリットを挙げていきます。

  • 担当領域が広がった

  • 各職場と関われる時間が限られるので、一回一回の出勤を大事にするようになった

  • 常勤の時よりも人間関係のしがらみを気にしなくていい

  • 間接業務が少なめ

  • 時間の使い方を自分で調整できる

何よりもよかったのは、以前よりも仕事に対して真摯に向き合えていること。

ぶっちゃけ正社員よりも責任が軽くなるから、気楽に働けるな〜なんて甘いことを当初は思っていました。
その甘さゆえに、妥協して働いていたこともあります。懺悔です。

ですが、漠然とした罪悪感がありました。
パートであることを言い訳にして、責任逃れをしてばかりだと思っていたんです。

そして、「こんな働き方を本当にしたかったのか?」と考え直し、自分がそれぞれの職場で達成したい目標を明確にしたときに、怠惰な自分を反省して気持ちが改まりました。

改心した現在の私がお仕事で意識しているのは、「伝えたいことはその日のうちに、やるべきことはその日のうちに」ということ。

出勤の頻度が少ない分、後々「あの時やっとけばよかった」とならないように、自分が何をしたいのか・すべきなのかを考えながら働くようになりました。

また、いろんな業務に関われるので、新鮮な気持ちで働くことができています。

小児分野においてはまだ右も左もわからない状態なので、子供たちの可愛さに癒されつつも、そのパワフルさに圧倒されているのが正直なところ。

障害特性を踏まえた関わり方も、成人領域とは異なる部分があるため難しさを感じています。
けど、ST9年目にして、たくさんの「わからない」にぶつかることができるのもありがたいことだなと思っています。
早く慣れたい。個別の療育ができるようになりたい。と、焦る気持ちもありますが、相手を知ることが第一歩という重要な部分を忘れずにキャリアを積み重ねていきたいです。

一方で、慣れた老健に出勤したときは、長いお付き合いの利用者さんの顔を見てホッとする時間は今の私にとって必要な時間だな〜と感じています。
スタッフの方々もたまにしか出勤しなくなっても以前と変わらず温かく受け入れてくれるのもありがたいです。

そんなホッとする場があることを感謝しつつ、スタッフとコミュニケーションをとりながら利用者さんに還元したいというポジティブなサイクルが生まれているという状況です。

訪問も訪問で楽しいです。
利用者さんが生活してる場を見ることで、実用的な効果を意識してリハの内容を考えるようになりました。

機能改善はもちろん大切だけど、利用者さんのリアルな悩みや希望を引き出して、生活上の不便や危険を減らしていけたら、ST冥利に尽きる限りです。

このような気持ちで、今私は3箇所の職場を掛け持ちしながら働いております。

もちろん関わる職場が増える分、覚えなければいけないことや課題も増えるわけですが、逆に視野が広がって私にとってはメリットだと思えています。

結果として出勤日数は正社員時代と大して変わらないのですが、今の方が働く楽しさややりがいを感じられています。

加えて、副業ができるのも嬉しいこと。

もともと物書きが好きだったので、自分の文章でお金を稼げたらと過去に考えたことがありました。
STになった時点で、物書きのお仕事の道はもう選べないと思っていたんですよね。

正社員時代は副業禁止だったので、物書きは個人のブログくらいで完全に趣味の範疇でやっていました。
それもそれで楽しいのですが、お仕事として文章を書くようになって、言葉への愛情や意識がさらに高まった感覚があります。

働き方を変えたことで、正社員時代には気づけなかったSTの仕事のやりがいを感じられました。
また、副業ができるため、色んなお仕事に挑戦できるのもパートという働き方の魅力です。

パート掛け持ちのデメリット

とはいえパート掛け持ちのデメリットももちろんあるので、正直にお伝えしておきます。

実際に掛け持ち生活を始めて、不便や不安を感じたことは以下の通りです。

  • スケジュール管理が面倒

  • 移動時間や体力のロス

  • 福利厚生の制限

  • 安定性には欠ける

職場が増えれば増えるほど、シフトやスケジュールの管理が大変になります。

ついつい仕事を詰め過ぎてしまったり、スケジュール帳にシフトを転記する時に書き誤って、うっかり無断遅刻や欠勤になるリスクがあるので注意です。

ちなみに私は仕事と仕事の間の移動時間を短くとりすぎて、遅刻ギリギリになったことがあります。

そもそもいくつか仕事をハシゴすると、移動の時間で結構つかれます。
極力1日1現場でシフトを組むのがオススメです。

そしてなによりやっぱり、非正規の不安定さはぬぐえません。

雇用期間が限定的だったり、正社員に比べて得られる福利厚生が限られていたり。

もし病気に倒れたとき、有給や休職手当などを受けられなければ収入がゼロになってしまいます。

将来的な金銭的な安定性は、正社員に比べて低いです。

だから、これだけパート掛け持ちSTのメリットについてお話ししておきながらも、一生この働き方をしようとは思っていません。

ただ、今後の働き方のイメージはまだぼんやり。

しばらくは今のスタイルで働き、複数の職場でいろんなスタッフ、利用者と関わりながら、私が解決したい社会的な問題を見つけて、型にとらわれない働き方で解決のために奔走できたらなと思っています。

おわりに

現在の私の働き方をご紹介しながら、パート掛け持ちのメリット・デメリットについてお伝えしました。

STを続けるか悩まれている人は、非正規雇用でSTをする、「時々ST」という働き方も視野に入れてみていただきたいなと思っております。

なぜなら、私自身がSTの仕事が好きだし、同士の人が労働環境を理由にSTを辞めてしまうのは正直さみしいしやるせないから。

そして、STの手が足りていない現場をいくつか見て、STのリハを受けたくても受けられない人を少しでも減らしたいという理想をずっともっていたから。

実際、週一でもSTがいるかいないかの差は大きいと思うんです。
もちろん常勤の方がいるに越したことはないし、頻度が少ない分できることも限られるけど。

けど、私はその制約の中で何をどこまでできるんだろうと考えるのが楽しいんですよね。

ここを楽しいと思えそうな方は、パートの働き方の適性ありだと思います。

ここまでお読みいただいて、STキャリアに悩まれている方の働き方の選択肢が少しでも増えたら幸いです。

ご質問やコメントがあればコメント・DM・マシュマロなどでお話聞かせてください。

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