RM(BTS)のソロアルバム”Indigo”を編集視点から語ってみた
突然ですが、BTSの特にRM(ナムさん)のファンです。
そんな彼が昨年末にindigoという初のソロアルバムを出して、毎日聞いています。彼はアルバムの中でいろんなアーティストとコラボしているのですが、インタビューの中で話していた内容がとても編集的だと共感したので、ちょっと長くなるけど語らせてください。
Yun
例えば、アルバムの1番最初の曲「Yun」では、Erykah Badu(R&Bシーンを大きく変えたレジェンド的な人)とコラボしている。ナムさんは、なぜ29歳の自分がこの歌詞を歌うよりも、彼女の歌声で歌ってもらった方が説得力があるのか、そしてなぜ若者がこのメッセージを彼女の歌声で必要としているのかを説明するために、たくさんの文章を書いて送ったらしい。
全て自分で歌詞を書いてそれを歌ってほしいと頼むことは、一方的な印象も与える。だから、Erykah Baduというレジェンド相手にとても失礼じゃないかと心配しながら連絡をとったと話していた。
Yun(Yun Hyong-keun 1928-2007)は韓国の芸術家だ。彼は、朝鮮戦争が終わった後、国も貧しく飢餓が常態化していて、人々が芸術を見る心の余裕も無かった時代からずっと、自らも投獄されながら絵を描き続けてきた。
そんな彼は、苦しい状況の中でも人間であり続けるために、自分の中にある怒りや凶器みたいなものを描き続けていた。「何か(Yunにとってはart)をする前に、まずは人間であれ」という歌詞はYunの生きざまを表していて、ナムさんはその生き方に共感し、リスペクトしていたからこそ、Erykah Baduの歌声で届けることにこだわったんだと思う。
ちなみにこの曲は、アルバムのイントロ、一番最初の曲だ。
私はこの話をを聞いて、ナムさんのアルバムづくりの過程がめっちゃ編集やんと思ってうれしくなった。私自身も「だいちのめ」という郷土編集マガジンをつくっていて、新しい号を作るときにはまず、特集のテーマを決める。アルバムで言えば、コンセプトみたいなものだと思う。
全ての号には特に伝えたいテーマがあって、それについて編集部自ら文章を書く時もあるけど、多くの場合は取材する人に語ってもらう。だからまず、伝えたいことを誰に語ってもらうかという、ディレクションがとても大事になってくる。ここで編集者の藤本さんの言葉を引用したい。
特に音楽分野のアーティストが自ら伝えたいことをアウトプットする過程について、「編集」を意識したことはなかったので、ナムさんの回答はとても新鮮だった。
そして、インタビュアーの人が、こうしたアーティスト同士の対等なやりとりが本当のコラボレーションだよねと話していたのが印象的だった。その裏側には売れてる人とコラボしたら売れるんじゃないかという、安易なコラボが世の中に溢れていることを示唆しているように感じた。
余談だけど、ナムさんの自宅にはYunの作品があって、その作品とよく対話するらしい。「僕のこの困難はたいしたことじゃないですよね?」と。
No.2
一番最後の曲「No.2」についても、parkjiyoon(韓国の歌手)の歌声で届けたいと思いながら作ったことを語っている。
以下、ナムさんがSUGA(BTS)の番組に招かれて語っていた内容を紹介したい。
この曲はアルバムの中で特に好きな曲の1つだけど、parkjiyoonさんの声が歌詞にマッチしすぎていて、ナムさんが意図していたことがすごくよくわかる。
そしてこの曲は、ナムさんが26歳の時に歌ったもの。あえて今の29歳の自分の歌声に更新せず、当時の声で届けたかったと話していた。26歳で振り返らないって歌うのと29歳のそれとでは、作品としては別物だよなあと思うエピソードだった。
と、私の推しへの愛がだだもれの内容になってしまったけど、編集視点でも学びの深いアルバムなので、ぜひ聞いてみてほしい。他のコラボしているアーティストも最高だから。特に、CloserとかWildflowerとか。
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