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いつだって、飛び込む準備ができていれば、世界は両手を広げて待っている。

この本は、正社員の医療記者として働く傍ら、空き時間にイタリアンレストランでアルバイトを始めることになった岩永さんが、働きながら感じたこと、考えたことをしたためた日記のような読みものだ。

店主であるシェフや常連さん、同僚のアルバイト、本業(記者)の仕事仲間、旬のキノコを送ってくれるキノコ採り名人・・・。いろんな人物が登場する。そして、

副業は本業と違う心構えでいいの?
どうやってお客さんと一緒にいい時間を作っていく?
みんなが気持ちよく働けるコミュニケーションって?

など、働くとはどういうことかについて悩む様子が、とても丁寧に吐露されている。そして悩んだ末に出した自分なりの答えを行動に移していく様子に、引き込まれる。

そうだ、確かにそうだ。シェフは本気でしかるとき、いつも丁寧語になるのだが、ガツンと叱られて心の底から恥ずかしくなった。記者だって普段から言葉の選び方が雑な人間が、仕事でいい記事を書けるはずはない。

一期一会の飲食店での接客は、自分が意図しては知り合えない他者と、一瞬であっても人間的な関わりができるチャンスでもある。ただ機械的に注文を取って料理を運ぶだけではなく、そんな風に誰かと心を通い合わせることができたなら、時給で働く私の仕事の時間は、人に売った時間ではなく、自分で創る自分の時間となる。受け取る給料以上の価値を持つようになるのだ。

そして、お店という居場所があることで、どれだけ人生が豊かになったかということがすごく伝わってくる。バイトを始められたのがちょうど1年前(2022年8月)というのが、信じられないくらい。

チェーン店ではない、個人店の良さも感じる。こんなお店が町のあちこちにあったら毎日楽しいだろうし、うまくいかないことがたくさんあっても、自分の居場所があると思えると、なんとかがんばれる。

私も背伸びをすれば、岩永さんと同じように50歳に手が届く年齢だ。いよいよ50歳が目前になった頃、心身ともに、新しい世界に飛びこむ軽やかさを持っていられるよう、生きていきたい。


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かとうちはる
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