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生き抜けよ!
彼らが出てくると春も本番である。
まずオオカマキリが登場する。大きい卵鞘だとだいたい200匹くらい出てきて、あたりは小さいカマキリだらけになる。
最強の捕食者である彼らも生まれたばかりの頃は狩られる側である。身体が出来上がったものから順繰りに世界へと散らばっていく。
成虫になれるのはこのうちのほんの一握りである。それを見越しての200匹なのだ。昆虫は個人の意識ではなく総体で生きている。
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カマキリは不完全変態だから、生まれたときからカマキリの格好をしている。
小さくても立派な鎌を持ち、なんと勇ましい姿だろう。
ぼくはカマキリの孵化を見るのが大好きである。だから冬の間に卵を見つけるととってきて花瓶にさしておく。なかなかその瞬間に立ち会うのは難しいが、卵鞘から房のように垂れ下がって我先に兄弟を押しのけるようにして前幼虫からカマキリのかたちになっていく姿はいつみても感動する。
孵化とか羽化というのはまったく不思議なものである。人間はどっちもしないからなおさら興味が湧くのかもしれない。小さなカマキリたちは歩けるようになると跳ねるようにしてそれぞれの思うまま風の吹くままに分かれていく。一緒にいると共食いをはじめてしまうのを知っているのだろう。生き抜けよ、とぼくはその小さな背中にむかってつぶやいた。
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