枯れ落ちる前のかがやき
紅葉というのは要するに枯れていくその過程にすぎない。ひとは悪くなっていくその過程に良さを見出したことで豊かさを得たのだと思う。
例えば熟成という言葉がある。要するに腐っていく過程であるが、その途中にこそ真の美味さを発見したのである。肉や魚の熟成がそうである。腐る一歩手前が一番美味いとされる。
ワインやハード系のチーズも熟成すると美味くなる。要するにあれは酸化なのでワインは酸化しすぎると酢のようになってしまって飲めないがほどよい酸化は出来立てよりも良いものになる。
なんでもかんでもフレッシュであれば良いというわけではないのだ。では自分はどうだ。歳を重ねて熟成されたか?実に怪しい。時々とても魅力的な年配の方に出会うことがある。このように自分も年を取っていきたいと思うのだが思うだけである。
木々の紅葉する葉が煌めくのは本当に枯れてしまうその一歩手前の一瞬だけである。はっとするような美しさを見せてから死んで土に還るのだ。紅葉は花と違って虫や鳥を呼ぶわけではない。恣意的に美しく着飾っているのではない分、花よりも美しいとぼくは思う。純粋さが違うのだろう。
紅葉は一枚の葉っぱだけ見れば死であるが、なにも木が死ぬわけではない。春になればまた芽吹き新しい葉が生まれるのだ。紅葉は成長であれ継続であれ老いであれ連続する日常を彩る一コマである。それもとびきりに美しい一コマである。
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