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オークラァの花

余所の咲き乱れるオクラの花に比べて、我が家のオクラはなんと慎ましいものか。たったひとつだけ、ぽつんと咲いていた。
背が低いから、雨で土の跳ね返りをあびて、ただそこにじっとあるように。
 
ぼくがカメラを向けてアングルを探していると、オクラは身を捩らして葉で顔を隠そうとした。
 
キミの祖先はアフリカから来たんだってねとぼくがいうと、オクラはなるべくそっぽを向くようにして、知らないわ私は生まれたときからここにいるんですからと拗ねてみせた。
 
雨だわ。水滴で花弁が揺れた。
うん台風が来てるんだ。見上げると雲が忙しなく動いている。
いやねえ、またお召し物が汚れるじゃない。オクラは花びらについた土を恨めしそうに眺めて言った。
恵みの雨さ。ぼくは立ち上がってカメラをバッグにしまった。
わからないひと。オクラはそれきりぼくと口をきいてくれなくなった。

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