話は100点とってから
中学生の頃の話である。
今でもそのときの担任の言葉が忘れられない。
先に言っておくと、ぼくはこの先生を尊敬などまるでしていない。それどころか、ある種の態度には嫌悪すら覚えるほどである。だけど、あのときの言葉だけは三十年以上経った今でもぼくの糧になっている。
テストの採点結果が配られた。みんなの出来があまり良くないからもっとよく勉強するようにというようなことを言ったんだと思う。そこである生徒が言った。
「先生の教え方が悪いから出来ないんじゃないんですか」
すると先生はなにもかも了解したような顔をして言った。
「わかった。それじゃあまずテストで100点とってくれ。100点とって、先生の教え方が悪いから余計に勉強しないと100点とれなかったと言えば、先生は自分の教え方が悪かったと認めよう」
周囲に不平の音や不満の声が漏れたが、なぜかぼくはこの言葉に感動していた。ひとを批難するまえにまず自分が十分努力しろということだ。ひとのせいにするまえに自分がやるべきことをやり抜けということだ。
それからぼくはひとのせいにしたくなると思うようになった。自分は十分に力を尽くしたのか、と。そしてそれから学んだのである。自分が精一杯やると、他人のせいにする気が起きないということを。
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