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一番駄目な人を

好きになったから頑張る

この勝利は誰にも見せない


森にだけ見せる

ずっとそうしてきた

今までも

なぜ人間どうしで勝手に話して

流行とか決めたりするの?

緋色のネクタイ

真っ白いピラフ

魚の形のドーナツ

字余りなバラード

なぜ森の好みは聞かないの?


一番駄目な人は駄目ではなくなった

正体もばれたから続きは教えない

誰にも見えなくなったところで私

きっと笑いを我慢出来ないね

絶対いい顔してるよね

そして何事もなかったかのように

そのまま頑張り続けるのだろう


あそこの柱の隙間では

カメラだけが静かに回って

デビューしたてのヒロインの

驚いた顔が大写しに


次は何処へ行こう

一番駄目な人はもういない

一番駄目な人は一人でよかった

たったの一人でよかったのだと

そういうところで終わりたい

そういうところでちょん切って


ア・ラ・モードのプリンは崩れ

演歌歌手の着物は七色

蹴飛ばされもしたお洒落な舗道が

誰にも憎まれなくなって

大丈夫

翅は破れているけれど

まだ飛べますと顔を上げ


私の中の森が消える

一番大好きだった森


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お読みいただきありがとうございます。明治神宮外苑再開発事業における樹木の伐採に寄せて書きました。




読んでいただき、ありがとうございます。 ほとんどの詩の舞台は私が住んでる町、安曇野です。 普段作ってるお菓子と同じく、小さな気持ちを大切にしながら、ちょっとだけ美味しい気持ちになれる、そんな詩が書けたらなと思っています。