アナリストって何?(現役スポーツアナリストによるアナリストQ&A①)
前置き
謎が多いスポーツアナリストのあれこれについて、自分なりに解説していこうと思います。もし、アナリストに興味のある方がいれば、コメントまたは各種SNSでお声かけ頂けたら喜んでお話します。どんな質問も大歓迎です。
とりあえず今回は基本的なところから書いていきます。
Q1.そもそもスポーツアナリストって何?
アナリストとは、言葉のまんまの意味で、
「analyze(分析する)」に
「~ist(~する人)」をくっ付けた言葉で、
「analyist(分析する人)」という意味になります。
なので、例えば経済を分析するのならばその人は経済アナリストと呼ばれることになりますし、スポーツを分析する人ならば、スポーツアナリストと呼ばれることになります。筆者は、アナリストとして活動して3年目になります。
(※以下、スポーツアナリストをアナリストと略して表記していきます。)
また、アナリストはこのように説明されています。
ざっくり言うと、アナリストは選手(あるいはチーム)をサポートする役割の1つで、サポートする手段が「情報」であるという話です。
情報というのは具体的には数字を用いたデータやグラフの場合もありますし、相手チームの映像の場合もあります。
それらを駆使して、監督や選手達が感覚的に把握できない部分をサポートをし、チームにとって価値のある情報を提供していくのがアナリストの役割です。
Q2.いつからアナリストって存在しているの?
スポーツアナリストの歴史は古く、1990年代にはバレーボールの国際チームにはアナリストが帯同していたという話も聞きます。
(スポーツは種目によって分析しやすい競技と、分析しにくい競技に大きく分かれますので他の競技のことは詳しく分かりません。あくまで上記はバレーボールの話です。また、当初は今のような分析ソフトを導入していた訳でもなかったそうで、例えば選手にプレービデオを作る時は、ビデオを1プレー1プレー地道に編集してくっ付ける等、途方もない作業を分担しておこなっていたとのことです。)
それだけ昔から存在する割には、スポーツアナリストなんて言葉は最近まで聞いたことなかったぞという人も多いと思います。
じゃあなぜアナリストに注目が集まりつつあるのかと言ったら、おそらくロンドンオリンピック2012での女子バレーボールの銅メダル獲得の影響でしょう。
長らく表彰台から遠のいていた日本代表を世界トップレベルにまで押し上げた真鍋政義監督の手元には、いつもiPadがありました。
現在、日本スポーツアナリスト協会(JSAA)の代表理事である渡辺啓太氏が、当時の代表アナリストを務めており、試合だけでなく練習中にもデータを活用し、チームの躍進を陰ながら、しかし力強く支えていました。
大会期間中に代表チームのアナリストについて紹介する特集が放送されたり、真鍋監督の書籍にもアナリストについて言及するページもあったと思います。その辺りの出来事が、アナリストが広く周知されるきっかけになったのでしょう。
先人たちの活躍がなければ、もしかしたら自分の活動も始まってなかった可能性もある訳で… 頭が上がりません。
2022年現在、実力(とビジュアル)をメキメキと上げ、益々注目度が上がっている日本代表男子チームにももちろんアナリストが在席しています。
その活動の様子がニュースや記事で紹介されることも増えており、アナリストという役職の知名度も年々上がってきているように感じます。伊藤アナリスト、マジでかっけえです。
Q3.今現在アナリストって呼ばれる人たちって何人ぐらいいるの?
正確な数は分かりませんが、バレーボール界だけでもかなり増えてきているように感じます。アナリストがいるチームをざっくりとカテゴリごとで分けると
(2022年9月1日時点)
参考:Vリーグ公式サイト(https://www.vleague.jp/)
V.LEAGUE DIVISION1
男子:10チーム中9チーム(旧FC東京のみ、発足したばかりだからか記載なしですがそのうち採用されるでしょう)
女子:12チーム中10チーム
V.LEAGUE DIVISION2
男子:10チーム中3チーム
女子:11チーム中5チーム
V.LEAGUE DIVISION3
男子:10チーム中3チーム
V.LEAGUE全体
男子:30チーム中15チーム
女子:23チーム中15チーム
合計:53チーム中30チーム
大学カテゴリ
各学連1部リーグにチラホラ(ただし関東学連のみ1部にはほとんど在席していて、2部にもかなりいるイメージ)。
高校カテゴリ
男子:わずかにいる(おそらく全国大会レベルに3~5チーム程度)
女子:おそらくいない(導入を試みたチームがあるとは聞いたことがあります)
現状、Vリーグに関してはアナリストの在席率は60%程度ですが、過去にアナリストがいたチームも含めると、約70%ほどのチームがアナリストの採用経験があるとみていいでしょう。
大学カテゴリは他学連のことは詳しく分かりませんが、東海学連男子だと西日本王者の愛知学院大学、それに次ぐ実力をもつ中京大学・岐阜協立大学にもアナリストが複数名いるようです。
高校カテゴリでは清風高校や駿台学園など、名門校の一部のチームに、高校生のアナリストがおり、チームによっては大会時のみ上位カテゴリのアナリストが帯同するといった事例もあるようです(今後この流れが定着すると分析ソフトのライセンスの問題が出てきそうですが…)。
学生カテゴリでのアナリストの隆盛は個人的に今後も注目していきたいポイントです。
分析ソフトが年間ライセンス契約かつ決して安価ではない(後述)ので、金銭的な問題と、
データをどう活用するか、チームに浸透させるのもかなりの試行錯誤を要するので、このあたりの課題をクリアできるチームが、アナリストを採用している印象です。
次回予告
次回はアナリストの実際の活動内容について触れていきます。
なんか面白味のない、お堅い文章になってしまってるなあという最近の反省。