生き物を家族に迎えるとは~新米猫主の読書レビュー『猫と生きる。』
保護猫を家族に迎えて1か月、もっぱら「猫」に反応する日々を送っている。
図書館でもそんなわたしの「猫」センサーが発動した。
『猫と生きる。』
図書館で、猫の飼い方の本と一緒に並んでいたこのエッセイを手に取った。
2匹の猫たちと暮らし始めたばかりの私は、実際の猫との暮らしが覗けるかもしれない、と借りて帰った。
猫との出会いの場面には記憶に新しい我が家の経験と重ねて共感し、ハプニングや別れのシーンではまだ仔猫のうちの猫たちに重ねて想像した。
吸い込まれるように本の世界に入りこみ、あっという間に読み終えた。
涙なくしては読めなかった。
猫が家族になる前だったら、さらっと読み終えていたかもしれない。そもそも手にも取らなかっただろう。
特に中盤以降、何度も涙をぬぐった。
預かっている猫の命の重さと猫としての幸せを考える著者の揺れ動く心情に、強く心を揺さぶられた。
未来のヒントに
生き物が好きな息子がペットを飼いたいを言いはじめたのは数年前。
そこからペットを飼ったことがない私と夫は、自分ごととしてペットがいる生活を想像するのには時間と覚悟が必要だった。
そこから飼うなら猫にしよう、猫なら保護猫がいいのでは、とゆっくりと話を進めた。
大きく事が進んだのは保護猫カフェに行ってから。
経験がなくても飼いやすそうな猫を、兄弟で預かることになった。
1週間のトライアル期間(お試し期間)の最終日、「うちのこになってね」と猫たちを抱きしめた。
猫たちがうちに来てからは、ただ居てくれるだけで家の空気ががやわらかくなって、家族の会話も増えたのを実感している。
猫たちが心を癒すには十分すぎる存在になっていく一方で、いつか来るお別れのことをが頭の隅にあった。
猫を知れば知るほど、闘病している猫の情報が入ってきた。
もし、うちの猫たちが同じ状況になったときに、どこまで治療をするのがいいのだろう?仕事をしながら看病することはできるのか?金銭的に十分な治療はしてあげられるのだろうか?はたまたどこまで治療して延命するのが猫の幸せなのだろうか?動物にとっての幸せとはなんだろうか?
そんな簡単に答えが出ないことがぐるぐるめぐり、元気いっぱいの猫たちを前に、頭の中の一点がいつも曇っていた。
この本には著者が経験した2匹の猫とのお別れがつづられている。
同じ飼い主の判断でも、一度別れを経験したうえでの2回目のお別れの時は、著者は別の考えを抱いていた。
1匹の猫の一生を俯瞰して見つめ、獣医さんの意見も聞いて思い悩んだ末、最後は猫主として決断をされた。
ありきたりの言葉になりがちな気持ちの描写はとてもリアルなものだ。
著者の心が大きく揺れるのを感じ、決断するつらさも、のちの後悔も、臨場感のある文章からまるで当事者になったような気持ちになって読んだ。
猫とともに「今」を生きる
飼い猫の重い病気がわかった著者に、獣医がそう言った。
これまで猫たちとの別れを想像して漠然と不安を感じていた私にとって、一つ道しるべになる言葉になるだろう。
確かに猫たちとの生活にはいろんなアクシデントがある。
でもそれがいいスパイスとなっていて、我が家に来てくれたことに感謝しかない。
この獣医のメッセージから、今ある充実した猫たちとの生活を存分に楽しもうと思った。
これからも猫と生活を共にする裏側には、大なり小なりアクシデントがつきもので、何がいいのか迷うこともあるだろう。
もし病気になったりけがをすることがあれば、その時の苦しみを和らげる方法を考える。
そう、「今日が猫にとっていい日」になるように。
今は猫との生活を楽しんで、ためらいなく愛を注ぎたい。
私も猫と生きる。
保護猫のトライアル期間中の出来事をつづった記事はこちら↓