第3回 米国の農村における食料不安と肥満問題:現代の農業・食料が抱えるパラドックス
2012.12.24
田中敬子
ケンタッキー大学社会学部コミュニティ・リーダーシップ開発学科
概要
田中敬子さん(ケンタッキー大学社会学部コミュニティ・リーダーシップ開発学科准教授)をお招きして、拡大版でおこないました。米国の農村社会では、農業大国であるにも関わらず食料不足と肥満という相反する問題が共存しています。この問題の背景について、オープンな議論が熱く交わされました。
今回のA –launchは
田中敬子さん(ケンタッキー大学社会学部)をお迎えして
拡大バージョンの「A –launch+」として行われました。
テーマはアメリカの農村地域における食糧不足と肥満問題。
アメリカでは、景気後退を境に
偏食による肥満と貧困という一見相反する問題が深刻になっています。
この問題は農村地で多く存在しており
生産地でありながら食糧不足地であるという矛盾が生じています。
田中さんは
農村地での研究が都市に比べて少ないことに着目して研究されています。
「農村の特徴を考慮しながら、これらの二つの矛盾を理解すること」
が、今回のお話の趣旨です。
矛盾の原因としては
「階層の制度化や地域間の違いなど社会構造によって生じた格差」
が考えられます。
複雑な問題を整理するために
4つの指標が紹介されました。
「食料の可用性」「入手性」「安価性」「妥当性」です。
たとえば、米国の農村では
バイオエタノールや飼料のために単一の穀物を大規模に生産しており
野菜などはほとんど栽培されていません。
そのため
日本の農家がおこなっているような自分の食事分の野菜を
余った土地で育てることはアメリカでは少なく
必要な食料はコンビニなどで加工品・冷凍食品として
買いそろえる必要があります。
農村であるからと言って、食料の可用性が高いわけでなく
入手性もコンビニに限定されていることがわかります。
4つの指標を使って整理した結果としては
肥満と貧困の問題を、農村の現象として一概に理解することは難しく
「地域の独自性」を理解することが大切である
と述べていらっしゃいました。
参加者には、研究者の方が多く、
「農村という言葉の定義は何か?」
「具体的なデータの取り方は?」
など熱く議論がかわされました。
日米の研究の違いも垣間見えた、興味深いお話でした。
岡田文子