林業のライバルはパチンコ!?
この日の出張は、本州の中で、東京からもっと遠い場所ともいわれる島根県西部。時間距離が遠いという意味ですが、私は広島経由でバスに揺られて3時間、ようやく益田に到着しました。目の前には本流にダムがひとつもない美しい川、高津川が流れる風景が広がっていました。この地域には、西日本で5番以内に入るような大規模の林業素材生産会社もあります。出張の目的は、高津川流域林業活性化センター主催で開かれた講演会に呼ばれたためで、マーケティングの話を中心に、森林資源の活かし方、地域連携のビジネス論などをお話させていただきました。
また、この日の懇親会ではとても嬉しい収穫がありました。今日初めて出会ったとは思えないような林業会社、製材会社の若(セガレ)さんたち。私と年齢も近い。ビジネスでも色々と面白い繋がりが見えてきた。そんな時、懇親会で出会った彼がこう言いました。
「古川さんの言う、地元の林業を3Cで考える競合ライバル視点ってなるほどって色々思いました。そういう視点でいえば、うちらのライバルはパチンコなんですよ!」
「え!?」
「確かに、最近、林業は注目されている。うちは広葉樹が多いので、チップも含め仕事量も多いし、色々な販路がある。忙しく、面白い仕事の一方で、今はとにかく人が足りない。それでもね、地元に大きなパチンコ屋ができて、そっちに行ってしまうんです。」
「なぜですか?」
「簡単ですよ、バイトは時給がいいし、正社員になれるって言って、そっちに行く。パチンコで正社員ですよ!僕らは、パチンコに負けるんかと思うと悔しくて。」
地域企業の人材獲得競争
そう、地域雇用において若い人、優秀な人材は常に奪い合いなのです。林業4000億円、パチンコ30兆円という市場規模の差。講演では、市場規模とは?と解説するために、パチンコなどの大きな市場を持つ異業種についても紹介しました。「利益なき理念は寝言・理念なき利益は犯罪」と言いつつも、個人の目指す理念と利益の方向性(ベクトル)やその嗜好にあれこれ批評することは出来ません。
時給の開きがどれだけあるか、契約社員か正社員か。
その現実の差は、大きいのです。
もう一度、企業のライバルを定義する、ライバルについての考え方。
「お寺」の競合は、隣のお寺ではなく、他の宗派だったり、他の宗教だったり、いやいや、心の相談をマスコミや芸能人に求めるという意味では、細木数子やマツコデラックスもライバルであるということ。その問題に近いことでしょう。同じ業種という狭い視野でなく、広く考えていきたいところです。但し、競合というよりだからこそ自社。自分の力を高めること。林業・木材業で「必要性、欲求性、物語性」を生み出すことが大切であり、会社としてマーケティング発想をしっかり取り入れられるかがポイントです。安定した仕事(顧客)を創ること、よき会社(社員)を作ること、それが何よりも第一です。
誇りに思えるビジョンがあり、収益源があり、理想のキャリアプラン(会社の成長、自分の成長、年収アップが見える)といった、カッコイイ会社を林業・木材業界でサポート&プロデュースする。そんな仕事をしていかねばならないと思えたエピソードでした。
そのためにも、例えば、林業(素材生産)以外の副収入の比率ビジョンを(増やすも減らすも含め)つくり、トータルでの収益力を高め、社員たちにはキャリアアップを具体的に設計し、年収の将来ビジョンを策定していく必要があります。年収の目標と収入比率を社内に公開していくことで、①未来の社員から信頼を得られる ②他の企業からの信頼が高まる とし・年収の目標、将来の収入比率を明確にし、企業を成長させる戦略を練っていくことが肝要です。
(地域再生・森林再生コンサルタント古川大輔日記 2013.11.27より編集)
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