中絶手術〜24歳差の彼〜

本当にこれでいいの?

1人の命を自ら殺してしまう事。

罪悪感で胸が締め付けられそうだった。

診察台に座るなり
全身麻酔の注射が打たれた。

すぐに意識朦朧として眠りについた。

目を覚ました頃には病院のベッドで
横たわっていた。

手術からまだ1時間も経たずに目が覚めた。

痛みもなくすぐに動けそうだったが
看護師さんに、もう少しゆっくり休んで
と言われ、時が経つのを静かに待っていた。

二度とこんな思いはしたくない。

二度と中絶なんかしたくない。

ごめんね。

私のお腹にやどってくれたこと、
一瞬でも母親になれたこと
嬉しかったよ。
憎んでなんかないよ。

こんな決断になったけど、
あなたの分まで私らしく
生きていきます。

手術が終わって2時間ほど経ち
病院を出た。

歩き出すと体と足にかなりのだるさがあった。

麻酔のせいだろう。

彼からは心配のメールが届いていた。

手術前はあんなにも不安定で
苦しかった気持ちが穏やかになっているのを
自分でも強く感じた。

一緒に供養しに行こうね。

次の休みの日
彼と一緒に供養しにお寺へ。

彼との関係は
終わると思っていたけれど
簡単に終わらせる事ができなかった。

体の関係は一切持たなかったが
彼はいつも私を笑顔にしてくれる。
私の心の支えだった。

唯一甘えられる人。

彼と出会ってから7年。

彼から離れる日が来た。

「俺結婚することなったわ。」

不思議とホッとした。
嫉妬や執着心なんてのは全く無かった。

中絶手術を終えてからの5年。

私も色んな人とお付き合いしてきたが
私が全てをさらけ出した相手は
彼しかいなかった。

「強くならなきゃ。」
そんな思いが波のように押し寄せてきた。

彼と安易に会うことも電話することも
許されない。

この先どんなに愛する人が
出来たとしても
あなたの事は一生忘れはしない。

またね。
ありがとう。

fin.

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