コンサートの記録:チェチリア・バルトリとフランコ・ファジョーリのコンサート(12月18日、エッセン・フィルハルモニー)、そしてチューリヒの一夜
12月18日、エッセン・フィルハルモニーでバルトリとファジョーリのコンサートを聴きました。
指揮はジャンルカ・カプアーノ、オーケストラはモナコ大公音楽隊。
プログラム。
コンサートが始まる前。
ステージには大きなスクリーンがかかっています。
演奏中に色々な映像が映されるのですが、ヴェネチアの風景が多かった。
確かにヴィヴァルディにゆかりの深い町なのですが・・・中にはモーツァルト作曲《魔笛》のステージ画(シンケルの超有名な画)がかかり、その理由はよくわかりませんでした。
演奏中の写真撮影はもちろん禁止です。ただ拍手の時は通常は大丈夫なのですが、この日はそれも無理でした。
私の席は前から4列目で、バルトリをかなり至近距離で聴き、観ました。
当然、歳を重ねていますが、歌唱は健在です。
アンコールにはヘンデルのオペラ《リナルド》の有名なアリア『私を泣かせて』を歌い、大きな拍手を受けていました。
ところで、バルトリといえば・・・
もうずいぶん前になりますが、バルトリの超至近距離にいたことがあります。
それは・・・
急遽チューリヒに行くことになり、夜のコンサートをチェックしたら、トーンハレで、知り合いのある有名ピアニストのリサイタルがあることがわかりました。もちろんチケットは完売。
このピアニストに「今夜、チューリヒにいます。リサイタルのチケットを見たら、完売。どうしたらいいでしょう?」とメールを書いたら、「チケットを用意したので、当日券売り場で引き取ってね」という返事が来ました。
リサイタル開始直前、私の右隣の席に女性が滑り込んで来ました。
彼女が左肘を肘掛けに載せ、手を垂直に立てているので、手首が否応なく目に入ります。
彼女は、それはもう、見たことのないような時計をしていました。
横目で目を凝らしてみると・・・ROLEXの文字が!
それも雑誌で見るようなROLEXではありません。ダイヤが散りばめられた、小ぶりのもので、特注ではないかと思われるものでした。その品格といったら!
左隣にいた夫に「右隣の女性、すごいROLEXしてる、さすがチューリヒ!」と囁いたら、さりげなく視線を向けた夫が「彼女、バルトリだ」というのです。
なるほど。バルトリはROLEXの宣伝にも出てましたね。
で、夫に話しかけた時に、夫の左隣の男性が目に入ったのですが、
それは指揮者のベルナルト・ハイティンクでした。
休憩になり、後半が始まる前には二階の人たちの視線を感じました。
バルトリとハイティンクの間に、(奇妙な)日本人夫婦が座っているわけです。
この夜はもう一つおまけがありました。
このリサイタルに偶然、知り合いの若いピアニストがチューリヒ在住という友人を連れてきていました。
2月のことで雪で飛行機が遅れ、朝から何も食べていなかった私たちは大空腹を抱え、イラつき気味。
そこでこの初めて会った彼に「チューリヒ在住ならこの時間でも食べられるところを教えて」というと、彼はどこかに電話をしていました。
ちなみに、こちらでは、オペラやコンサートの後、よほどでなければ、まともなレストランで食事をすることはかなり難しいです。
夫は「スイスだからメーヴェンピック(チェーン・レストラン)くらいあるよね。どこでもいいから」と言ったのですが、しかし彼はこの言葉を完全無視、「僕の車で一緒に行きましょう」と言うのです。
そこで乗り込んだ車が内装は革張りのレンジ・ローヴァー(冬で雪ですから)。
さる超高級ホテルに連れて行かれました。
客は私たちの他に4人いただけでした。
ちゃんとした席に通され、私はサービスの人に「この時間でできるものは何?」と訊きました(遅い時間だと火を落としているので、せいぜいパンとチーズくらいしかないのが普通です)。
そうしたら「お客さまのお望みのものをなんでもご用意します」というのです。
後でわかったのですが、この「チューリヒ在住の若者」は大金持ちの貴族で、顔がきいたんですね。
彼にとっては、メーヴェンピックなんてとんでもない、ということなのでしょう。
オーダーしてやっと落ち着いたら、先程チラッと見た他の4人は、ちょっと離れたところの、横幅が4メートルほどもある暖炉の前でくつろいでいました。
同行者が「ロジャーだ!」というので、私は彼の友人か、と思いつつ、さりげなく見たら、「ロジャー・フェーデラー」と夫人、そして知り合いのカップルだったのです!
私はフェーデラーの大ファン。
もう興奮しまくり。でも遠慮しようと、気もつかないふりをしたのですが、実は心臓バクバク。
しかし、トイレに行く風を装い、しかも迷ったふりをしてわざわざ近くを通り、この目でしっかりと確認しました。
ちなみにフェーデラーもROLEXの宣伝をしているし、レンジ・ローヴァーで連れて言ってくれた若者もROLEXをしていました。
私は高級時計には全く興味がないのですが・・・
すごい一夜でした。
FOTO:©️Kishi