オペラの記録:パーセル作《ディドとアエネアス》(プレミエ、1月2日、エッセン・アールト・ムジークテアター)、ラテン語の教材の話
1月2日、エッセン・アールト・ムジークテアターでヘンリー・パーセル作曲《ディドとアエネアス》のプレミエを観ました。
もともと2020年11月に予定されていたプレミエですが、コロナ禍で1年以上延期となりました。
パーセルは20歳代半ばでこの作品を作曲しています。パーセルは36歳で亡くなりました。この作品の世界初演は1684年とされています。
イギリスのバロック・オペラの記念碑的作品です。
プログラム。
ピットの中。
編成は小さく、指揮者がチェンバロとオルガンを弾きます。
2022年最初の公演かつプレミエ、それにコロナ禍という特殊な状況の中、というので、上演前にインテンダントのハイン・ムルダースさんが挨拶しました。
カーテンコール。まず歌手と合唱だけ。
次に指揮者が登場して、オーケストラも讃えます。
演出チームの登場。
以下はプログラムの中からです。
プログラムの写真は2020年11月18日、オーケストラ付きメイン・リハーサルの時のものだそうです。写真家はBettina Stoess。
このディドとアエネアスの話、ベルリオーズのオペラ《トロイア人》もあるように、題材としては知られている話です。
アエネアスは滅亡したトロイから逃れる途中でディドと恋仲になり、しかしディドを捨ててローマに向かい、ローマ建設をするという話です。
さて、私がケルン大学で学んだ時、修士号を取るのに、ラテン語試験合格が必須でした。
そのための全学共通のラテン語コースを受けなければなりませんでした。
1学期間(ほぼ半年)週5日、1日4時間の授業でした。
授業はものすごくハードで、予習と復習にそれぞれ4時間ずつ、1日合計12時間の勉強が必要で、一生のうち、これほど勉強したことはありません。
最初は全学400人ほどいた受講生もだんだん減り、最後は200人ほどになり、試験を受けました。そのうち合格者は50人ほどでした。
ラテン語だけで2年以上かかっている学生もいました。
ちなみに以前はギムナジウムで必須だったラテン語も、最近では、フランス語かラテン語かの選択となっているところも多く、実用的なフランス語をとる子供たちが多くなっているそうです。
大学によって違いはありますが、私がいた頃のケルン大学では哲学学部(文学部系)と法学部はラテン語必須でした。
そういうわけで、ギムナジウムでフランス語をやった学生たちは、大学でラテン語をとらなければなりません。
前置きが長くなりましたが、大学のラテン語授業では、まず超スピードで文法を習い、その後、『アエネアスの物語』を読んでいくのです。
もちろんラテン語と言っても時代で相違ありなのですが、大学で取り上げるのはシーザーの時代くらいまでのラテン語です。
で、授業ではローマ建国の物語を実際にラテン語で読んでいく、というわけです。
そして、試験はシーザーの『ガリア戦記』から、一部をドイツ語に翻訳するというものでした。
思い出しても辛い半年間でした。若くはない私が20歳そこらのドイツ人学生に混じって授業を受けるのですから。
合格者の一覧表に自分の番号を見つけた瞬間、あれほど頭に入っていたラテン語文法がすっかり飛び去りました(本当にこんな感じ!)!
今ではすっかり読めないけれど、シーザーが書いたジャーナリスティックなラテン語を原文で読む、というのは、やはりとてもtempting なことだと思います。
《ディドとアエネアス》、《トロイア人》を観るといつも、ラテン語授業を受けていた日々を思い出します。
Foto: ©️Kishi