コンサートの記録:アンドラーシュ・シフのピアノ・リサイタル(9月5日)、エッセン・フィルハルモニー
9月5日、エッセン・フィルハルモニーでアンドラーシュ・シフのリサイタルを聴きました。毎年開催されるルール・ピアノ・リサイタルの一環でした。
シフはこのフェスティヴァルに23回登場しています。
プログラムは『Carte Blanche』となっており、当日、シフが弾きたい曲を話しながら弾くというものでした。
プログラム。
ステージに現れたシフは、
「クラシック音楽会の慣習には不思議なことがあります。
コンサートはほぼ2年前に決まります。その時にプログラムも訊かれるのですが、2年先に何を弾きたいか、これは難しい問題です。
私は朝目覚めた時にすでに音楽のことを考えています。朝食の前です。食事より先に考えているのです。
みなさん、2年先の今日、何を食べたいか考えるように言われたら、どうしますか?
今日も午前中の段階で何を弾くか、まだわかりませんでした。
音楽会の不思議な慣習の一つに・・・
シンフォニー・コンサートが始まる前、オーボエがチューニングのために音を出します。オーケストラのメンバーたちが、そこでチューニングするのですが、あんなに大勢が一緒に音出しして、ちゃんと音がとれるのでしょうか・・・
そうそう、オーボエが出す音は『A』です。
調性のこともお話しましょう。」
・・・・と大体こんな話で始まりました。
当日シフが演奏したのは
バッハ《2声のインヴェンション第1番ハ長調》
バッハ《音楽の捧げ物》から〈リチェルカーレ〉
モーツァルト《ファンタジー》ハ短調
バッハ《フランス組曲》第5番ト長調
モーツァルト《ジーグ》ト長調
バッハ《平均律》から〈プレリュードとフーガ〉ハ短調
モーツァルト《アダージョ》ハ短調
モーツァルト《ソナタ》へ長調
バッハ《イタリア協奏曲》へ長調
アンコールにはあの超有名な《ソナタ》第16番ハ長調の第1楽章でした。
もちろん全て暗譜です。
「調性は私にとっては色彩です。例えばハ短調は私には灰色に思えますが、中には緑色に思う人がいるかもしれません。灰色は絶望ですが、でも希望が必要なので、希望を意味する緑色と思うのかもしれませんね・・・」
とか・・・
「バッハは私にとって最大の作曲家です。そう思う人はそれでいいし、そう思わない人は不運、ということですね」
などと辛辣な箇所もありながら人を魅了してやまない話が続きました。
休憩なし1時間半の演奏は、それはそれは筆舌に尽くしがたく、よく知られた曲が、そして自分でも弾いていて馴染みのある曲が、全く別次元のものとして響いてきました。
語りをしながら進めるコンサートもよくありますが、シフの話も
全く別次元でした。
ドイツは9月に入ってから爽やかな夏の陽気です。
これはフィルハルモニーの二階バルコニーから。
FOTO:©️Kishi
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