『マックス・クリンガーと未来の芸術作品』展 ~ ベートーヴェン
4月5日、ボンのブンデスクンストハレ(Bundeskunsthalle)で開催されていた『マックス・クリンガー(Max Klinger)と未来の芸術作品』展に行きました。
これは元々2020年10月16日から21年1月31日までの予定でしたが、コロナ禍で閉鎖され、3月に再開、期間を4月5日まで延長されていました。再開後はネットで申し込みするものの、なかなか予約がとれず、最終日にやっと間に合いました。
ここが入口です。試験的プロジェクトとして、コロナ陰性証明書を持っていない人は、コロナ簡易検査を受けなければなりません。15分後に陰性と出ると、入場できます。
展示への入口です。
マックス・クリンガーについては、日本でもよく紹介され特別展も開かれていますが、以下は「美術手帖」の説明のサイトです。
パンフレットです。
この特別展では200点にものぼる作品が展示されましたが、メインは1902年作の『ベートーヴェン』、そして『十字架にかけられるキリスト』でした。
『ベートーヴェン』制作中の写真と『十字架にかけられるキリスト』がパンフレットに出ています。
『ベートーヴェン』について少し説明すると・・・
グスタフ・クリムトを中心とした『ウィーン分離派』の芸術運動はとても有名です。彼らは1898年に第一回の展覧会を開きますが、中でも有名なのは1902年の展覧会です。この時、クリムトは『ベートーヴェン・フリーズ』を制作しました。これはウィーンにある分離派会館(Secession)に展示されていますので、ご存知の方も多いと思います。
この1902年の展覧会には21人の芸術家が参加しましたが、そのメインとなったのはクリンガー制作のベートーヴェン像でした。
このベートーヴェン像は現在、クリンガーが生まれた街ライプツィヒにあります。
http://www.lvbeethoven.com/MeetLvB/GermanyLeipzig.html
それを今回、ベートーヴェン・イヤーの一環として、生まれた街ボンで展示しました。
後ろから見たところです。
クリンガーは彫刻の材料を求めて、ヨーロッパ中を旅しました。
下は第一版です。完成作の隣に展示されていました。
上述のパンフレットにも出ている『十字架にかけられるキリスト』ですが、これは1891年、ミュンヘンで公開された時、大スキャンダルになりました。
クリンガーがこの絵を描いたのは30歳の時でした。
宗教的なテーマのこの絵は教会ではなく、美術館での展示を念頭においてかかれました。
スキャンダルの理由は、まず、キリストが全裸であることでした。
さらに、このテーマの絵画では、通常、キリストが中央に描かれるのに対し、ここでは右端においやられ、中央は『女性』であるマグダラのマリアであることも特異です。
そして、倒れそうなマグダラのマリアを支える使徒ヨハネはただ一人、真正面を向いていますが、その顔はベートーヴェンです。
この絵もライプツィヒにあります。
クリンガーは自身もピアノの達人で、その制作には音楽からインスピレーションを得たそうです。ブラームス、ワーグナーとも親交がありました。
クリンガーのアトリエの写真です。
これは《新サロメ》。ファム・ファタールとしてのサロメの下に見える男はいろいろな説がありますが、向かって右側は「洗礼者ヨハネ」、左側は「ショーペンハウアー」と言われています。
ブンデスクンストハレを出ると、向かい側はクンスト・ムゼウム・ボン。青空が広がっていました。
FOTO: Kishi