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Bayerische Staatsoper 15.05.23 オペラの記録:ヴェルディ作曲《アイーダ》プレミエ(5月15日、ミュンヘン・ナツィオナールテアター)
5月15日、バイエルン州立オペラがヴェルディ作曲《アイーダ》の新制作初日迎えました。このプレミエを観ました。
当日のナツィオナールテアター。
長雨と低温が続いていますが、この日は晴れ間もありました。でもみんなコートやジャケットを着ています。
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満員です。劇場前には『チケット求む』の紙を持ってい人もたくさんいました。
プログラム。
演出はヴェネチア出身のダミアーノ・ミキエレット。
「今、イタリア人の良いオペラ演出家って誰?」という質問に、(少なくともドイツの)専門家たちは「ミキエレットしかいない」と言います。
ミキエレットは、この20年間、ヨーロッパの数多くの有名オペラハウスやフェスティヴァルで演出をしています。
ところが、『最優秀オペラハウス』の常連であるバイエルン州立オペラにはこれがデビューでした。
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休憩時です。
休憩の前、最後の音が終わらないうちから、大ブーイングの嵐でした。
休憩時も人々は当惑したような表情でした。
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カーテンコール。
アイーダ役エレーナ・スティキーナ(ロシア出身)には大拍手。一人で出てきた時はステージにひざまづき、両手で顔を覆って泣き出してしまいました。
あまりこんなことはないのですが、別の《アイーダ》でアムネリスが泣き出したのを見たことがあります。
アイーダ役とアムネリス役、技術的にも内的表現にも大変難しく、この二つの役をこなせる歌手はそうはいません。
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大ブーを浴びる演出チーム。
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《アイーダ》は『反戦オペラ』です。「戦争のあるところには愛の場所はない」。ラダメスもアイーダも愛国心と宗教心、システムへの服従を強制され、この世に居場所はない。
オペラは、ただただ愛するラダメスが欲しかったアムネリスの言葉「平和、平和、平和」で終わります。
今回は、ロシアのウクライナ侵攻を彷彿とさせるステージでした。
さまざまな問題もあり、ブーも理解できるのですが、しかしそこまで狂気のようにブーを叫ぶのは理解できません。
少なくとも、有名な『凱旋』の場で、片足をなくしたり、車椅子に乗った軍人が勲章を授与される演出は、象やラクダを出したり、馬鹿馬鹿しい踊りをさせるよりはずっと的をえており、メッセージが伝わります。
ところで、数多くの《アイーダ》を観てきましたが、私にとって最高の《アイーダ》演出は90年代半ばのグラーツ・オペラ(オーストリア)の制作でした。
これはペーター・コンヴィチュニィ演出で、2008年に日本でも上演されたので、ご覧になった方もいると思います。
この時のステージ上の道具はソファ一つ。
コンヴィチュニィは登場人物の社会的立場、性格、心理描写、そして出来事に対する反応を微細に丁寧に描き、なおかつ強い反戦メッセージを届けていました。
最後はステージ正面奥の搬入口が開き、劇場の外を人が歩いたり、車が通ったりしているのが同時進行で見えました。
アイーダとラダメスはここから劇場の外に出て行きました。劇場と違う別世界に出ていくわけですが、そこには現実の世界にも平和は不可能ではない、という希望を託していると思いました。
それに、コンヴィチュニィは「私の演出では、愛する2人を離れ離れにさせたくなかった」と言っていました。
そういえば、グラーツのプレミエの時に、コンヴィチュニィは観客からトマトを投げつけられたそうです。「オペラのプレミエにトマトを持ってくる人なんている?まだ観てもいないのに、偏見に満ちた計画された行動だよね」とコンヴィチュニィは笑っていました。
これには後日談があり、最後の公演の時にトマトを投げつけた女性がコンヴィチュニィのもとに来て、トマトを差し出し、「これは私が丹精込めて作ったトマトです。召し上がってください」と言ったそうです。
さて、今年、バイエルン州立オペラのオーケストラ、バイエルン州立管は創立500年を迎えます。劇場の中で、それに関する特別展示があるのですが、その中に同管が特注した楽器の説明もありました。
《アイーダ》の『凱旋』シーンでは有名なアイーダ・トランペットが使われるのですが、これもその特注楽器です。今回はステージの両サイドのロージェで3人ずつ、合計6人が演奏しました。
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プレミエの後にはプレミエパーティーがあります。これはその入場券です。
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プレミエパーティーは誰でも入れるわけではないので(政治家をはじめ、有名人、著名人もいます)、会場に通じる階段にはチェック係がいます。
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これはプログラムに挟まれたポスターです。
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以下はバイエルン州立オペラの《アイーダ》のページです。
https://www.staatsoper.de/stuecke/aida/2023-05-18-1800-13381
FOTO:©️Kishi
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