「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の鉄馬の女たちはヘドロ化現象を起こして緑の地を潰したのではないか説

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現在、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」がAmazonプライムの会員特典対象として配信されています。本作は全人類が観ていて当然の大傑作なので、もはや概要やストーリーについて説明する必要はないでしょう。もし万が一まだ観ていないという場合は一刻も早く観ましょう。吹き替え版はタレント吹替がクソなので字幕版がオススメです。

マッドマックス 怒りのデス・ロード(字幕版)

ちなみに私は公開当時の2016年に本作を東京の立川シネマシティの極上爆音上映で観たのですが、その後に個人ブログに感想文を書いたら予想外にバズってしまうというアクシデントが発生しました。今でも「マッドマックス」「水耕栽培」でググるとわりと上の方に出てくると思うので興味のある方はよかったら。

で、今回改めてAmazonプライムで本作を観て、新たに気付いたことがあります。それは

鉄馬の女たちはヘドロ化現象を起こして「緑の地」を潰したのではないか?

ということです。

観た当初は、汚染された環境下で土に直接植物の種を植えたから芽が出ず、自給自足サイクルが崩れ自滅したと思っていたのですが、それだとむしろ「緑の地」は砂漠化するはずです。そもそも現在だってオーストラリアの内陸部は砂漠気候ですから、さらに環境が悪化し土地が荒廃するとしたら砂漠化するのが自然です。

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しかし、もともと「緑の地」だったところはドロドロの沼地と化していました。砂漠化どころかむしろ通常の土壌よりも水分が多く、ぬかるんだ状態になっています。「カラス」と呼ばれる現在の住民が竹馬のようなものを使用しているのも、歩行時の接地面積をなるべく少なくしてぬかるみを防止する生活の知恵なのでしょう。

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フュリオサの年齢が中の人と同じと仮定するなら、彼女が故郷の「緑の地」を離れていたのは約30年。映画の前日譚を描いたアメコミの内容によれば、「緑の地」は植物・果樹が生えていて動物まで飼えるほど豊かな土地だったそうですが、それが砂漠化でもないのに30年で面影がなくなるまで荒廃するというスピードも速いように思えます。落ち葉や動物・住民の糞尿で堆肥を作って土壌改良することだってできるのに。

※映画の前日譚を描いたアメコミは私はオリジナル版を読みましたが、後に日本語版も出版されました。↑

そこで思い当たりました。これら映画の劇中のシーンおよびその前日譚のアメコミから導き出される「緑の地」荒廃の仮説は

土壌改良しようと良かれと思い糞尿や生ゴミを土の奥深くにしっかり混ぜ込んだ結果「ヘドロ化」を引き起こした

ではないかと。

土壌がヘドロ化する原因は、何らかの理由により土壌中の「嫌気性菌」(生育に酸素を必要としない細菌)が繁殖し、硫酸イオンなどが還元されて(土壌中の酸素が不足した状態になること)硫化水素となりガス化したり、硫化水素イオンの形で鉄イオンと反応して硫化鉄になることです。これらが土壌に蓄積すると、腐敗臭のような臭いがする腐敗型土壌(ヘドロ)となります。硫化水素や硫化鉄など悪臭を放つ物質は、植物の根を攻撃して根の伸長を妨害します。こうなるといくら有機肥料を加えても根が吸収せず、かえってヘドロ化を促進し逆効果になります。

ここからは私の想像ですが、かつて「緑の地」に住んでいた鉄馬の女たちは、良かれと思って動物・住民の糞尿や生ゴミをそのまま地中深くにしっかり混ぜ込んでしまったのではないでしょうか?糞尿や生ゴミは一定箇所にそのまま堆積させ、一度発酵させてからでないと有機肥料としては使えません。ゴミや糞尿をそのまま土に埋めると、ハエやナメクジ、ダンゴムシといった害虫や上記の「嫌気性菌」の発生源となります。おそらく鉄馬の女たちは、有機肥料の扱いを誤って土壌改良に失敗し、そのリカバー方法も分からなかったのかもしれません。
なお、一度ヘドロ化した土壌の改良は可能です。実はヘドロは乳酸菌や酵母菌など力を借りて分解しさえすれば肥料となり、それ自体が土壌改良の材料となりますが、本作の舞台設定はオーストラリア。微生物による発酵およびその活かし方に対する文化がなく、そのノウハウを誰も持っていなかったのでしょう。それか、上記シーンの現在の住民「カラス」は根気よくヘドロを分解して土壌改良しようとしている人達なのかもしれません。シーン内には実際のカラスもたくさんいることが描かれていますが、カラスの糞だって集めれば肥料になるのですから。

本作はそのヒャッハーな作風から「頭の悪い映画」「知能指数がどんどん下がる映画」といったレビューもありましたが、むしろ「知識や教養がないととんでもないことになる」ということが如実に表現された映画ではないかと思います。

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