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マッチングシンドロームとマッチングガール

文学フリマ東京37で購入した本の感想その1です。
『マッチングシンドローム』は、通販で購入していて、文学フリマに向かう間に読みました。
『マッチングガール』は文学フリマ東京37にて購入したものです。
どちらもトーキョーブンミャクから出ているすなばさんの作品です。
マッチングアプリに出会いを求める人々が描かれています。

『マッチングシンドローム』

男性視点の作品。初版は2023年7月1日。

マッチングアプリって男女の出会いのためのアプリだよね?でもなんか恐くない?みたいに思っていましたが、これは古い認識なのですね。
実際のマッチングアプリがどんなものなのかよく知らないものの、作中で仕組みがわかりやすく、説明的でなく説明されているのですんなり受け入れて作品を楽しむことができました。

以下、ネタバレを含みますのでこれから読む方は、読み終えてから戻ってくる方がいいかもです。


主人公のタツミはなかなかの好青年。
おそらく外見も悪くない。
何人もの女性とマッチングし、対面で会ってみて、タツミはその関係を進めたいと感じるものの、女性側はそうは思わないみたいでいずれも、一度きりのデート(でいいのかな?)で終わっている。
さわやかイケメンなのに。
面白みがない?
彼の繊細さが受け付けない?
繊細な人って面倒そうだもんね。
わたしは好きだけどなぁ。
それはそうと、タツミはちょっと惚れっぽいかもしれない。

最後に出会うマミは今日でアプリを止めるという。
マミは華やかな外見と落ち着きがなく飾らない内面が、とてもアンバランスな女性。
タツミが「お刺身頼んでもいいですか」と言うのに対し
「刺身大好きです!」と、「お」をつけずに答える。
細かいところであるけれど、こういうところにマミの飾らなさがよく現れている。

この2人がこのあとどうなるのかは書かれておらず読者の想像に委ねられている。
なんだか気が合いそうだし、うまくいってほしいなと思う。


『マッチングガール』

こちらは女性目線で書かれている。
初版は2023年11月11日。文学フリマ東京37の日だ。

主人公のアプリのニックネームは「M」。
かつては夜のお仕事をしていたのだけれど、いまは昼のオフィスで働いている。
マッチングアプリで出会った男性たちは、彼女のゴージャスな見た目に惹かれて「いいね」してきたのだろう。
マッチングアプリでは写真の印象が大事だ(らしい。マッチングシンドロームで学んだ)。
ゴージャスな見た目から「遊んでそう=いける」と判断されたのかもしれない。
そんな出会いが重なっていくうちに、マミはすっかり疲れてしまうのだ。

仕事で失敗をし、くさくさした気分のまま、遊び慣れていそうな男性に「いいね」を返す。
遊びたいのか、自分を罰したいのかよくわからないけど、
わたしは、その両方な気がする。
でも、そこでマッチングしたアライさんは思っていたような遊び人ではなくて、マミは自己嫌悪を募らせる。
そしてもう、マッチングアプリを止めようと考える。

受付を停止してから、たまっていた「いいね」に目を通す。
いくつか「いいね」を返して退会ボタンを探そうとしているときに、さっきいいねを返したばかりのタツミからメッセージが届くのだ。

タツミ!!

『マッチングガール』の冒頭に出てくる基本情報では、彼女のニックネームは「M」である。
けれどすぐに「マミちゃん」と呼ばれるシーンがあるので、主人公の名前がマミであることはすぐにわかる。
なのに途中まで、わたしはマッチングシンドロームのマミと同一人物だって気がつかずに読んでいた。
アライさんとの会話で人と関わるのが苦手なのに、派手な顔をしてるからそう思われなくて、そのギャップに苦しんでいることを打ち明けたときにようやく「あれ?」と思ったくらい。
おやおやまぁまぁ!
あのマミさん!
ニヤニヤが止まらない。
改めて、タツミときっと気が合うよ!うまくいきますように!と願わずにいられない。
『マッチングガール』は『マッチングシンドローム』とセットで読むべきだし、出版順に読んでください!!と叫びたい。

わたしの知っている人の中に「ふん、こんな都合のいい話、現実にはあるわけない」って切り捨てる人がいるけれど、フィクションなんだから、都合がよくてなにが悪いのか?
むしろ都合のいいフィクションが読みたいよ。
それに、現実だってときどきは、不思議なくらい都合よく進むことがあるよね。
ここで言っても仕方ないけれど。

文学フリマの会場で、すなばさんから『マッチングガール』サインを入れていただきました。
そのときに好きな季節を聞かれました。
わたしは夏が好きだと答えました。
『マッチングガール』を開いたらすぐに夏が好きだと言う人物に子どもじゃあるまいし、と思っているシーンがあって、思わず苦笑いしたのでした。
春夏秋冬の区切りだと、4分の1の確率なのだけれど、これだって、都合のいい偶然だ。

マッチングシンドローム、マッチングガールは以下の通販サイトでご購入いただけます。
よろしければぜひ。


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