幼いころの大切な記憶。愛知の郷土料理「箱寿司」を作りました
愛知県の郷土料理でもある箱寿司。四段の木枠を実家から引っ張り出してきました。数十年前の木枠ですが、まだ木の香りが良く十分使えます。しっかり洗い、天日干しをして箱寿司を作っていきます。今回も、味噌作りを共にする料理の巨匠、谷さんに教えていただきながら進めていきます。
名古屋流は角麩にあり
箱寿司は全国にありますが、愛知県では甘辛く煮た角麩を入れるのが特徴。
その他に、あなごやモロコ(今ではすっかり希少に)も入っていた記憶があります。念のため角麩ともち麩の説明を。
<かく麩と餅麩>
かく麩とは、グルテン(小麦蛋白)に小麦粉・もち粉を加えて蒸します。角麩よりも餅米粉が多く、よりモチモチしているのが餅麩。どちらも、原材料がすべて植物性で、高タンパク・低脂肪な健康食品でもあります。長時間調理しても煮崩れることがないのですき焼きや煮物の具材として美濃、尾張地方で愛されてきました。
箱寿司の作り方自体はとっても簡単だけに、個性が溢れます
基本的には木枠に酢飯を敷き、上に好きな具材をのせてギュッと押して出来上がりです。
美味しいポイントはゆず酢。酢飯にはもちろん、じゃこもゆず酢で漬けこんで具材に加えると爽やかな香りで食欲が進みます。箱に茗荷やハランの葉を敷き、角までぎっしり二合の酢飯を詰め、その上にかんぴょう、角麩、錦糸卵、じゃこのゆず酢漬け、大葉、茗荷、椎茸、そら豆を自由に載せてグッと押す。酢飯とたくさんの具材がさまざま合わさって、複雑な味のご馳走が出来上がりました。
美味しいだけじゃない匂いや風景の記憶が愛しい
箱寿司を作ってみて、幼い頃を思い出しました。こどもの日やお雛祭りに祖母が作ってくれた箱寿司はご馳走感がありました。具材が渋めなので、決して大好物ではなかったのですが、木枠で押している間の酢飯の香りが好きでした。彩りがとってもきれいなのですが、押しすぎてカチカチになっている酢飯がちょっと苦手でした。大人になった私には、そこも含めて味わい深く、美味しく感じましたが。
とても懐かしい箱寿司でしたが、実はそんなに食べるのは好きじゃなかったことも思い出し、ちょっと微笑ましいです。私の大切な料理の記憶、匂いや味覚、風景も含めて子どもたちにも伝えていきたいと思います。案の定、我が子も見た目のリアクションはとても良かったものの、味見した程度でした。きっと大人になったらこの良さがわかるはずです。