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好きなように生きてもよいのなら

何もかも捨てて、どこか遠くへ行きたい。

なんかの小説に「お父さんをやめる」のような書き出しだけ立ち読みした記憶が蘇った。結局その小説を読むことはなかったけど、その冒頭文だけは鮮明に憶えている。ここからは妄想と現実の狭間で感覚的に語ろうと思う。だからその小説とはいっさい関係がないことを了承してほしい。

「今日から好きなように生きていく」

突然の言葉に妻の箸が止まった。何事もなかったかのように長女は白いご飯に“のりたま”のふりかけを掛けた。呆気に取られた次女が「どういうこと?」と聞き返す。食卓に並んだ熱々のおでんが一気に冷めたような空気になり、僕は酒の力を借りながら、何かを振り切るように箸を強めに叩きつけて言った。「だから、会社に行かなくても働ける環境を作るんだよ」言いたいことがうまく言えずに小声になる。妻は冷めた表情を変えることなく「会社辞めるの?」と鋭い眼光で質問してきた。蛇に睨まれた蛙のように「そうじゃなくて、働き方改革だよ」と自信なさげに答えた。間髪入れずに「どうやって?」と質問攻めは続く。

僕の職種は印刷と出版の営業で、お客様との商談から良質なサービスをプロデュースするのが仕事、と、言いたいところだけど、特にマーケティングが長けているわけでもないし、クリエイティブでもない。お客様にとって「都合の良い御用聞き営業」といったところだ。最近ではデータ作成もお客様側で作れる人が増え、インターネット上では印刷屋の仕事はどれだけ安く、早く、綺麗に、とファストフードの常套句のように、どこが一番その謳い文句に合わせられるのかと見られることも多い。このままいけばAIに仕事は奪われて、“生産性のない人間”と役人からレッテルを貼られるかもしれない。存在価値まで否定されるのかなぁ…。そうした不安は見えないウイルスのように広がっていった。コロナ禍で働き方改革は一気に加速したように思えたけど、田舎の印刷屋でリモートワークは環境整備がなかなか進まず、踏み込めない状況が続いていた。

コロナによって、あたりまえの日常は遠い過去になり、生き急ぐ人達は勢いよく急ブレーキをかけられた。「あれ、俺、なんでこんなに頑張って残業してんだっけ?」と自問自答する日々。会社のために働いてきた企業戦士達は中高年になり、営業成績は下がるけど、コレステロールと血圧だけは右肩上がりで高い数値を出していた。

「そもそも働き方改革って、生産性を上げて多様な生き方を模索しろって話だろ」と心の中で叫んだ。

無駄があっても改善されず、問題先送りな社風はコロナを1年間経験した今でも変わっていなかった。これから労働人口は減る一方で、今までの生産性が低い仕事は減らしていかなければならない。AIやロボットが代用してくれることを想定して、どれだけ価値を提供できるかが重要になってくる。先ずは仕事と生活を見直そう。そう思い立ったとき、自然に溢れた言葉が「今日から好きなように生きていく」だった。

どちらかといえば、好きなように生きるためにはトレードオフが必要だ。1日は24時間しかない。どこを削って何を増やせば良いのか…。

①睡眠

睡眠を制する者は人生を制するくらい睡眠は重要だ。その日のコンディションを決めるといっても過言ではない。布団にくるまり寝つくまでの時間も好きだ。子供のころ、キン肉マン消しゴムで夢のドリームマッチ劇場を眠くなるまで続けた。多感な時期にベットの中で吉本ばななの「キッチン」を夜遅くまで読み耽った。今でも枕元には読みかけの書籍が所狭しとならんでいる。寝床だけは快適でありたい。睡眠時間は多くても少なくてもダメだと思う。実質8時間は寝たいけど、だいたい僕の場合は平均すると7時間くらい。6時間だと頭が冴えないし、5時間だと確実にどこかで眠気が襲ってくる。車の運転が多い仕事なので集中力が切れると一気に睡魔が襲いかかり危険に晒されることもある。この記事も布団に入りながら推敲しているけど、睡眠の邪魔をしている要因の一つだ。寝る前のスマホは睡眠の質を大きく下げる。とにかく瞼が勝手に降りてきたら寝よう、それ以上起きていてもパフォーマンスは維持されない。そう感じた僕は午前零時にスマホを閉じた。

②食事

食事は一番の難関だ。なぜなら「誘惑」という恐ろしい悪魔が潜んでいて平常心を保つのが難しい。人間の三大欲求の中で最も動物的かつ自然な営みだからコントロールしづらい。だけどコロナ太りなんて都合の良い言い訳は、意思のない平和ボケしたバブルの話だ。食事の時間もダラダラするのは良くない。必要以上の時間は誘惑だけが増幅されるだけだし、アニメ「千と千尋の神隠し」で豚にされた両親のように欲深い人間の罰だ。朝昼晩、毎15分〜20分、腹八分目でお酒も一合程度で抑えるのがベスト。おっとコーヒーブレイクも忘れてはならない。今日もセブンイレブンで100円コーヒを注文しながら、夕飯はなんだろうなと思いにふける。

③運動

仕事は体が資本というけれど、補足すれば、生きることは体が資本といっても良い。体調を崩して良いパフォーマンスを発揮することはできない。僕はランニングで体を動かすのが好きだ。運動をしない人にもおすすめする。なぜならシューズさえあれば、いつでも始めることができるから。もし時間がないのなら30分歩くだけでも良い。朝日を浴びて脳も活性化するので仕事始めに最適だ。運動は食事と連動しているので双方で管理できるのも良い。一石二鳥ということになる。いつものコースに、いつもの景色と、いつもの人達がいる。それだけでちょっと幸せな気分になれる。
以前、走ることについて書いた記事がこちら↓

④仕事

仕事時間は多少考え方が変動する。たとえば、現在の本業のみ、現在の本業と副業、転職した本業のみ、フリーランス、企業するなど、仕事によって時間の使い方が変わってくる。今回は現在の本業と副業で考えてみる。先ずは本業の時間配分だけど営業職で削りたい部分は移動時間だ。打合せや校正をリモートにするだけでかなりの移動時間を削ることができる。見積作成もAI自動化すれば本社に帰ってからのデスクワークを省ける。案件の進捗状況もチャットなど可視化することでリアルタイムに解決すれば良い。理想は半分の4時間で本業、残りの4時間で副業が望ましい。もちろん本業で新規案件を企画するのでも良いが、お客様にとって価値を生み出すものでなければならないし、しっかりとしたインセンティブを確約できなければ、やはり働き方改革にはならない。どちら側に重点を置くかはやはり価値が高いほうになると思う。さて、副業は何がよかろうか…。

⑤家事【分業制】

料理は妻に任せている。偉そうに言って申し訳ないが料理本は好きだけど、見る、読む専門だ。理由は簡単で苦手だから。男子厨房に入らずは古い考え方だけど、各家庭で分業すればよいと思っている。そのかわり洗い物と洗濯は僕の仕事なので効率よく済ませたい。掃除は休日のみ僕がやる。ここで一つ問題なのは娘たちの家事手伝いだ。洗い物は時々自分の分だけ洗わせているけど、ほかは皆無といっていい。花嫁修行はいつ頃からやらせるべきか、そろそろ家族会議が必要だ。

⑥読書

僕にとって読書時間は学びでもあるし、趣味でもあるし、誰にも邪魔されない時間でありたい。ときめく表現に触れたとき、「あゝ、人間に生まれてよかったなぁ」ってつくづく思う。もっと知りたい。もっと感じたい。読んでも読んでも欲求は満たされることはない。平日は最低でも1時間、休日であれば4〜5時間読む時もある。この習慣だけは死ぬまで続けたいと思っている。

⑦動画コンテンツ視聴

今ではNetflixとAmazonprimeがメインでYouTubeとテレビは面白そうなコンテンツだけ録画して見ている。ほとんどアニメと映画とドラマ、たまにドキュメンタリーもあるけど今はマイリストに溜まっている状態だ。観ない日もある。

⑧その他(スキマ時間)

もちろんお風呂時間もあるけど短いので割愛する。仕事の移動時間や家事中に音声コンテンツを聴きながら作業することが多くなった。動画コンテンツより可処分時間が多いと思う。好きな人のSNSや文章は読むようにしている。

⑨まとめ

こうしてみると仕事時間の生産性が一番肝になるんだと感じた。削れるところは削っていこう。「好きなように生きていく」ためには“好き”を追求しないと駄目だし、やっぱり僕は“本”や“読書”が好きだなぁって改めて思った。あとは仕事にも欠かせなくなったスマホを開いている時間だけど、結構な時間見てるなぁ。iPhoneのスクリーンタイムで平均時間が出るので毎週改善することもできる。やってないけど…。

当時、「お父さんをやめる」という文言は結構ショッキングだった。そのまま読み進めたい衝動に駆られた。でも読まなかった。その小説は先進的な視点で多様な生き方と複雑に交差した家族の人間模様を描いた愛の物語?もちろん妄想なのであしからず。あ、この小説知っている人は教えてください。


好きなように生きてもよいのなら、本に埋もれて死にたい。なんなら“読書”を仕事にしたい。


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