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ラーメン大好き青森県民の短命県事情

日曜日の昼下がり、無性に「中華そば」が食べたくなって近所のラーメン屋に妻と二人で行った。

呼び方としての正しさは求めないけど「醤油ラーメン」ではなく「中華そば」がしっくりくる。「支那そば」なんて呼び名も好きだ。

行列ができるラーメン店なんて、田舎では稀にない光景なのだが、ここではよくある。土日のお昼はディスタンスをとりながら、店の外に並んでいることもよくある。

駐車場は満車にみえたが一台分空いていた。ツイている。急ぎ足で暖簾をくぐると満席だった。それでも一組帰れば4人席が座れる状態だ。常連の僕はメニューを頭に叩き込んでいる。というかここではお決まりの「①番」だ。

①番とは、この店のセットメニューのこと。①番は中華そばと小チャーハン、②番は味噌ラーメンと小チャーハン、③番は塩ラーメンと小チャーハン、④⑤⑥番は麺類も「小」になっている。もちろん単品メニューもある。

中華そばは単品で550円と驚きの安さ。①番はセット価格でも850円だ。この価格で採算がとれるのかと不安になる気もするのだが、良心的な価格設定はうれしい。回転率はかなりいよと思う。そこでなんとか補っているのだろう。

夫婦2人で営んでいるのだが、寡黙で職人気質な店主が調理をしている。いっさい語らず重そうな中華鍋を休まず振り続けるすがたは高倉健のようだ。不器用すぎる。(以下は妄想でケンさんと呼ぶ)

そんな不器用なケンさんを支えるのが奥さんの役目だとすぐに分かる。ケンさんとは正反対で、明るく、すこし甲高いよく通る声で接客してくれる。今日も奥さんの気持ちの良い声が店内に響き渡った。

「すいません」

僕は迷わず「①番と中華そば(妻の単品分)」といった。

先述したように注文は決まって①番なのだ。ここでは注文するときメニュー表に番号がふられていているので、いちいち「①番の中華そばと小チャーハン」など言わなくていい。

すると奥さんは決まってこういう。

「はい、①番と中華ね〜」

そのあとは厨房にいるケンさんに甲高い声でそのまま伝える。

「①番と中華〜」

ケンさんはうんともすんとも言わない。暗黙の了解を雰囲気でつかみ取ったケンさんは、重厚感のある中華鍋に卵を片手でわり、ごはんを入れたら鍋を上下に揺らして手際よくほぐす。それから味のしみたチャシューやネギを投入し調味料を入れリズムよく混ぜ合わせる。

「自分、これしかできませんから」と言わんばかりの職人技に惚れ惚れする。ああ、不器用すぎる。

中華そばも懐かしいあっさり味の透き通ったスープで、ちぢれ細麺によく絡む。具材はチャーシュー2枚とメンマにネギとシンプルだ。無駄なものは何一つない。

それにしてもこの夫婦の絶妙な連携プレイはいつみても飽きない。注文を聞いてからの一連の動作に無駄がないのだ。

「はい、①番と中華ね〜」

奥さんの優しい声につつまれて、運ばれてきた①番はいつものように煌々と輝きを放ち、僕の食欲をかきたてるのだ。

「いただきます」



***


日本一の短命県街道を走り続ける青森県はおいしいラーメン店が非常に多い。ついでにカップラーメンの消費率もかなり高い。麺類とごはんの炭水化物ダブルパンチとあわせて喫煙率も高く、糖尿病やがん死亡率もワースト1位で、これまたダブルパンチだ。

スープを飲み干すのが礼儀と男前になるまえに、自愛の精神をやしなわんとするべきだ。(心の叫び)


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