#7.わたしはどうしてアナウンサーになったのか。その①
前回は、アナウンサーたちはどうしてアナウンサーになったのか、という話を書いたけれど、
そんなことを言っているわたしはどうなんだ?
ということで、今日はわたし自身のことを振り返ってみようと思う。
【わたしはどうして、アナウンサーになったのか】
高校時代に所属した放送部の経験から、将来はマスコミ業界に就きたい!というのは揺るぎない夢だったけど、個人的には制作を希望していた。
いつかはCMやMVなんかを撮ってみたい、なんて考えていた。
というのも、部活動で練習していたアナウンスメントももちろん楽しかったけど、そこまで上手ではなかったし、番組制作をしているときのほうがよりわくわくしたからだ。
授業中、ノートの端に番組のアイディアや構成を書いたり、夜遅くまで番組編集したりと、それはそれは人生で1番といっていいほど、とてものめり込んだものだった。
(高校時代はあまりにも楽しかった記憶しかないので、また別の回に改めて書き記したいなぁと思っている。)
で。
マスコミはマスコミでも、アナウンサーは、どちらかというと、なりたくない職業だった。
その理由は、高校2年生(あるいは3年生)まで遡る。
(わたしの中では記憶を消したいほどの出来事だったのかほぼ覚えておらず、必死に思い出しながら書いている。笑)
もう16.7年も前のことだ。
地元・岩手の放送局の番組で、高校生リポーターを務めたことがあった。
確か、県内各地の高校生リポーターが、放送局の女性アナウンサーとともに、地元の特産物を紹介するという内容で、5分ほどのミニ番組。
なぜわたしが選ばれたかというと、優れていたからとか素質があったからとかでは全くなく、とても機械的な理由によるものだった。
放送部がある市町村では、高校生リポーターを放送部員が務めるという、ただ単純にそれだけの理由。
ゆえに、ある日突然顧問に呼び出されて「今度こんな企画があるんだけど、リポーターをやらないか」とそんな話をされ、「あ、じゃあ。はい。やってみます。」と返事をして決まったことだった。
当時、「わたし、テレビに出られるんじゃーん♪」と少しだけ調子に乗り、友達にちゃっかり宣伝することも忘れなかった。
迫りくるロケ当日に備え、リポーターのイメトレも十分にして、意外としっかりその日を楽しみにしていた。
そうしてやってきたロケ当日。
ロケ日が平日だったため、授業を抜け出してのリポーター業務。
皆は授業を受けているのに、わたしだけ違うことが出来る高揚感に包まれる。
部活の大会で堂々と学校を休める「公欠」のときと同じような、あるいはそれを上回るような興奮と優越感があった。
そう、今日は特別。
なんたって、テレビ収録があるんだもの!
ってことでわたし、さくっとリポーターやってきますけど何か?
と言わんばかりの涼しい顔で教室を出た。
あまりにもドキドキしていたからか、どうやってロケ現場に足を運んだかはまったく覚えていない。
顧問の先生の車に乗せてもらったのか、ロケバスで迎えに来てもらったのか。
ロケ場所は、市内の小さな小学校だった。
そこでは、地名からとった「二子(ふたご)さといも」が有名で、その紹介がロケのメイン。
予め渡されていた台本を頭の中で確認しながら、目にもまぶしいスカイブルーの番組用Tシャツを着る。
背中に大きく番組のタイトルロゴが書かれてあった。
サイズは少々大きめだが、当時のわたしは華奢だったため(当時はね)、Tシャツが大きいことさえも当たり前のように制服の上から着こなす。
髪の毛も整えて、スカートも綺麗にして。
よし、準備万端!
いよいよロケが始まる。
「こんにちは〜はじめまして〜」
女性の声がした。
テレビで何度か見たことのあるアナウンサーだ。
「あ、今日はよろしくお願いしますね〜」と、高校生のわたしなんかにまで名刺をくれたその人は、今日一緒にロケを担当する女性アナウンサーだ。
笑顔がキラキラとまぶしい。
テレビに出ている人のオーラを感じた。
「じゃあ早速、番組のオープニングのところから撮影していくね。」
持っている台本を再度見直す。
そっか、最初にわたしの自己紹介もあるんだよな、と確認すると、自然と背筋がシャンとするのを感じた。
台本をポケットにしまって前を向くと、今度は黒い物体が目に入ってくる。
テレビ用のカメラだ。すごく大きい。
運動会やピアノ発表会で父が撮ってくれたホームビデオ用のハンディカムに見慣れていたからか、とてつもなく大きく見え、まるで、人間の肩に乗っかっている黒い生物のようだった。
それを難なく担ぐカメラマン。
その横には、レフ板と呼ばれる光を反射させる白い板を持っている人もいる。
「レフ板って結構まぶしいものなんだな〜」
初めて間近で見るプロの本格的な仕事現場に、顔がどんどんにやけていく。
なんだかドラマの撮影みたい!
この場に自分がいることを不思議に感じながらも、現実を割とすんなり受け入れる自分もいた。
ディレクターさんが収録開始のカウントをする。
「それではいきます、5秒前、4,3,2・・・」
あっというまにロケは終わった。
その日初めてテレビ局の仕事やアナウンサーという職業を目の当たりにし、ロケ直後の頭の中はお花畑状態だった。
いやー本物のテレビ局と仕事しちゃった!
楽しかったなー、やっぱり将来はマスメディアでの仕事が良いかなあ。
こうやって自らテレビに出て伝える仕事もすごいなあ。
なんにせよ、とても楽しかったな!
どこを切り取っても高校生のわたしにはとても輝いて見え、キラキラした体験に満足して帰った。
が、しかし。
現実は1ミリもキラキラしなかったのだ。
後日、オンエアを見たわたしに、大きな衝撃が走った。
(続く)
※実際にロケで着用したTシャツ。その後パジャマとなった。(Tシャツあるある)