「昔からあるものに、新しい選択肢を」三浦えり写真展イベントレポート
グラレコ:しゅずいゆか
先日、三浦えりさんの写真展のプレイベントに参加しました。
このイベントの内容や感じたことを2記事にわたってお送りします!
スピーカー
塩谷歩波(イラストレーター兼小杉湯番頭)
龍崎翔子(ホテルプロデューサー)
モデレーター:三浦えり
銭湯とホテルの「ハレとケ」
塩谷:小杉湯を経営するにあたり、銭湯と家風呂・スーパー銭湯との違いは何かをすごく考えました。家風呂が日常、スーパー銭湯が非日常だとすると、銭湯は、日常の中の非日常「ケの日のハレ」なんです。
龍崎:私も同じこと考えてました!!今湯河原のホテルをプロデュースしてるのですが、私たちはまずホテルに来る理由の前に、街に来る理由を設計するんです。湯河原は、周辺の熱海や箱根に比べて、価格帯が低く観光資源も乏しいところ。つまり、旅行地だけど日常に近い場所なんです。SNSで誰もが発信できるようになり、もはや日常がハレになっている。その中で、逆に湯河原に来れば、日常(ケ)っぽい旅行(ハレ)ができるという点をコンセプトにしました。
塩谷:銭湯が「ケの日のハレ」なら、湯河原は「ハレの日のケ」ですね。
いい空間の法則
龍崎:「いい空間」には法則があると思っていて、それは「働く人がその空間に対して愛があるか」だと思うんです。働いている人のオーラがお客さんにも伝わっていく感じ。
塩谷:わかる!!小杉湯で「引き継ぎノート」というのがあって、小杉湯でおきたちょっとした嬉しかった出来事やちょっとした改善点を番頭が書き残して次の番頭に伝えていくということをしています。
龍崎:ホテルはみんなで掃除とかなかなかできないからそういう点で小杉湯は強いですね。うちも、Slackで「Sharing Emotion」というチャンネルを作って感情のシェアをするようにしています。
塩谷:私も社長もみんなで掃除をしているということも、運営側と従業員の温度差を埋めるポイントだったりします。
パジャマには夢がある
塩谷:小杉湯でアーバンリサーチと組んで銭湯グッズを出しています。そのきっかけが、私が銭湯のあとパジャマで帰りたい派なんですが、パジャマがダサすぎて着れない。じゃあ自分たちで作ってしまおうみたいな。
龍崎:「旅行者が夜遊びしない問題」というのがあって、みんなホテルに帰るとそのまま街に出ずに寝てしまうんです。なぜかを考えたとき、「部屋着を着るともう外に出たくないとなるからでは?」という仮説が出てきて、であれば外に出てもOKな部屋着を作ろう!となりました。パジャマには夢がありますよね!
街との共存
塩谷:スーパー銭湯と銭湯の違いがもうひとつあって、スーパー銭湯ってお風呂も食事も、建物内で完結するじゃないですか。でも、銭湯はお風呂だけなので、その後街を歩く楽しみがあるんですね。銭湯の近くの飲み屋に行ったり。そういう意味で、銭湯は街のどこかに行くハブのような立場にあるなぁと思います。
龍崎:確かに、今も銭湯が残っている場所って、いいお店がありますよね。ホテルって、ホテル内でキャッシュポイントをたくさん作れば効率的に儲けることはできるのですが、それだと街と共存ができないので、焼畑農業的になっちゃうんですよね。そうではなくて、ホテルを基点に街に出かけるようなホテルを目指しています。実際に、旅行者の予算って、4割が交通費、4割が宿泊費、残りの2割がお土産代となっていて、街に落ちるお金がほとんどないのが現状。もっと街にお金を落としてもらうようにしたいです。
塩谷:「お風呂がないホテル」を作って銭湯に行ってもらうっていうのも面白そうですね!
まとめと感想
今回は、2人の共通点に着目してまとめてみました。
2人とも活躍しているフィールドは全く別なのですが、話している中で共鳴しているところが多くて、その雰囲気を生で感じることができてよかったなと思います。
銭湯の後に街を歩く、というのは私もよくやっていて、スーパー銭湯との違いを聞いてすごく納得しました。確かに、スーパー銭湯行ったときは、大体街を見ずに帰ってしまいます。龍崎さんのホテルと街を共存させるというやり方もすごくいいと思いました。
あと、龍崎さんの新たなチャレンジで「北海道が寒いところを生かしてサウナストリートを作る」という話もありました。「湯河原の観光資源がないところを生かして日常を提供する」というのもそうですが、そうした一見弱みに見えるところを逆に強みに変えていく視点がすごいなと思いました。
来月、OMOTESANDO ROCKETで開催される写真展はこちらです。