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高校受験を控える母親の心構え

 受験体験……と聞けば、自身の話を浮かべる方も多いと思うが、今回は、私が昨年体験した息子の中学受験を隣で支えた母の視点をお送りしたい。

 もしこれから受験生を抱えるお母さんがいたら、参考材料の1つになれば幸いである。 

過去の自分の経験は役に立たない

 受験生を抱えるお母さんのほぼ全員がそうであると思うが、子どもの受験を目の当たりにすると、自身が受験した時のことを1度は思い出すと思う。

 どんな風に勉強して、どのくらいの成績で、どのレベルの学校を目指したのか。
 受験には合格したのか、不合格だったのか。
 合否を知ったときの気持ちはどうだったのか……

 多少なりと思い出されることだと思う。

 そして、その頃の自分と照らし合わせてみて「自分の子は……」と、大なり小なり比べてしまうと思う。
 それは自分の記憶と体験がそこにしかないので、当然の心理状態であるが、少しだけ心に留めておいて欲しいことがある。

 それは、自分と子どもは別ものであり、同じではないということだ。

 私は昨年、自分と子どもとのギャップに大変困惑した。
 まずは、内申である。
 ○○長を総ナメにしてきた私と違い、○○長といった役割を担うことに対して一切興味がないのが我が子達である。

 誰一人として私の血を引いていないのか!? と思うほど、誰も○○長をやらない。
 その結果、内申点にプラスαできる項目が薄く、受賞歴などもなく、書けることがないと当時息子が呟いた。

 「なるほど……今からやったらどう? 委員長とか」などと説いてみたが、その言葉が届く日はついぞ来なかった。

 続いて、成績でも頭を抱えることになった。
 これまでも本人の意思を尊重して通塾をした期間もあったが、相当に勉強が不足していることを受験目前になって知った。

 なんと言っても、1学期期末テストの英語では、5点という驚愕の数字をたたき出してきたのだ。
 私は目眩がした。
 なぜなら、私が中3の時には上位20番をキープしており、そのような点数を見たこともなかったからである。
 そんな点数がこの世に存在すると考えてもいなかった。

 これまでも、あまり芳しい成績ではないと感じてはいた。
 だがここまでとは……! である。

 思えば、私はずっと不思議に思っていた。
 勉強はやる気になればやるものであって、やる気が無い人にやりなさいと言っても仕方がないと考えていた。

 自身も両親から勉強しなさいと言われたことなど一度もない。
 だから、いつ勉強しなさいと言われるものなのか、また言うものなのかよく分かっていなかった。

 だから、そんなオカンの私は、勉強をする意味、勉強をすることによって得られる効果などを話はしても、勉強しなさいとは言ったことがない。

 とはいえ、あまり勉強しない子だとは分かっていた。
 それでも、受験が目の前に迫ってきたらやるのかな~と思っていた、がしかし。

 「やらんのかーい!!」

 人生でこんなに驚いたことはない。

 私は、受験が近づいてくれば人は頑張るものだと思っていたし、受験したい学校が見つかればそこに向かって努力するものだと考えていたが、誰しもそうではないことを知ったのだ。

 そして、我が子の場合「目標が高すぎる受験校」だけをさっさと決めてしまい、それに伴った勉強は一切進まなかったのである。

 こんなに恐ろしいことはない。

親の仕事はデッドラインを決めること

 さてこのように書くと、私はさぞかし放任で何もしてこなかったと映ると思うがそうではない……と自身では思っている。

 中2の後半には選択肢を増やすために、こういうことを取り組んだ方がいいだとか、勉強法について伝えたりだとか。
 タイムスケジュールを組んだ勉強方法だとか、ノートの作り方だとか様々な提案をしてきた。

 勉強しろとは言わないけれど、勉強するために必要な知識だけは授けてあげられたら良いなと思っていたのだ。
 そして私の個人的感覚だが、男子はいきなり成績が伸びるということがママある様に感じている。

 女子だとそうはいかない。
 地道にコツコツと積み上げて勉強するスタイルだから、突然爆発的に成績アップするという現象が余り起きない。

 だから私は勘違いしていた。
 もしかして息子は男の子だし、やればまだ間に合うのか……? と。

 さらにその不安すぎる願いを、塾の先生は後押ししてくる。
「夏休み頑張ればまだ間に合いますよ」である。
 私はその言葉を信じ、夏を迎える頃、高すぎる目標を下げさせずに取り組ませた。

 しかし、夏休みの終わりには多少成績が伸びたものの、お世辞にも目標校を受けられるレベルには到達しなかったのだ。

 さてここで塾の先生はこう言ってくる。
 「12月までさらに頑張ればギリギリ……」と。 
 はっきり言って、内申点がなく、プラスαも何もなく、現状のリアルな点数が足りていない息子にとって無謀すぎる目標であった。

 しかし、塾の先生は可能な限り「本人の希望を尊重してあげた方がいい」と言ってくるのだ。

 仰ることは分かるが、本当にそうだろうかと思いながら、迷いに迷って、後悔のないようにしてあげようとさらに塾代を積み上げて勉強させた。

 しかしながら、心底から勉強したいと考えているのか、本気で取り組もうとしているかなんて見ている母親が一番分かる。
 どう見たって、どう考えたって、彼の勉強に対する姿勢は「ワンチャンどうにかなる」ものではなかった

 けれども、もう少し頑張らせてあげた方が良いのかなと目標を変えずに応援し続けた。
 その結果、私も、そして息子自身をも苦しめる結果となったのである。

 そのことに気がついたのは、遅れに遅れて11月が迫った頃だった。
 当時、公立高校を主軸に考えていたが、ようやく現実に目を向けられるようになった。
 どう考えても彼の成績では、受けられる学校が少ない。
  希望校など、無謀な挑戦以外の何ものでもなかった。

 その少ない候補の中から、本気の目標校もう決めなければならないフェーズが来て、ようやく本当に高校生活に望んでいることがはっきりと言語化できるようになってきた。

 そして、その願いを叶えるために残っている選択肢は「私立高校」しか無かったのである。

 私は衝撃を受けた。
 公立高校以外の選択肢を最初から持つなんてことは、私の時代にはあまりなかった。
 しかし現役中学の先生は違った。

 今は浪人も就職も選択肢にない。
 必ず合格できる道を探して欲しい。
 漏れなく全員が高校生活を迎えられるようにするため、先生は必死だった。

 もちろん私も必死である。
 これ以上勉強をさせることも、とても苦痛であった。
 本人も全然成績が伸びず、ほとほと疲れを見せていた。
 だから私は決断を下した。

「公立は辞めて、私立専願にしよう」と。

 振り返ってみて思うのは、決断が遅すぎたということだ。
 もっと早くにこの決断を下していれば、無理に5教科全て勉強する必要はなかった。
 そして、3教科に絞った勉強で良いのであれば、そこまで塾代を積み上げる必要もなかった。
 私は冷静なようでいて、現実が全く見えていなかったと心底痛感したのである。

お金の計算をきちんとしておく

 さて、私立専願に振り切ろうと決めるには、情報収集が必要であった。
 どのくらい補助金がもらえるのか、自分たちの収入だといくらなのか。
 昔と違って、今はいろいろと援助があることも分かった。
 また、入学金免除などの項目もあった。

 しかしながら、私立高校専願と決めるのが遅すぎた。
 もっと早くに決断し、免除対象となる条件を満たすことを頑張らせていれば良かったが、ずっと無謀な挑戦をしようとしていたので条件を満たすこともできなかった。

 今となっては、遅くとも夏の終わりの段階で「次の手段」に手を打っておけば良かったと心から思っている。

 そして、通塾にかかった費用についても、後から後から追加されることに、ただ諦めて支払っていたなと反省している。
 もう少し早く決断して方向性を決めていれば、塾の費用も抑えられたし、それを高校の費用に充てることができたと感じる。

 というのも、半年の間に50万を優に超える費用をお支払いしたからにほかならない。
 最終的に受験した高校のレベルから考えると、はっきり言って塾に行かずとも合格できた。
 加えて、塾に通っていたのにも関わらず、塾の先生の説明では分からないと言って帰宅するので、結局私がマンツーマンで教えていた背景もある。

 全ての模試を私も同じように解き、息子に解説を繰り返して理解できるまで付き合った。
 なぜ塾に行ってるのに!? と思っていたが、息子の躓きがどこにあるのかを分かってくれる先生がいなかったのである。

 そう考えると、ますますお支払いした塾代の意味……と考えてしまった。

 だからもし、これから高校受験を控えている親御さんがこの記事を読んでいたなら、どうか。
 塾代はいくらまでを考えているか、を決めておいてほしい。
 そして、いつまでに、どのボーダーラインまでと決めてあげて欲しい。

  無理な挑戦は、親も疲弊するが、誰よりも子ども本人が疲弊してしまう。
 その前に白旗を揚げてやるのも、親の務めだと私は思っている。

 また、私立なんてありえない、選択肢にないと最初から排除しないであげて欲しい。
 今は学校の成績とは別のところで、受験校の倍率がおかしなくらい変動する。
 公立高校だけが良いわけでもない。
 私立ならではの良さもある。

 ただ、私立へ入れる覚悟をするならば、早めにした方が自分にとっても受験生の我が子にとっても優しい結果になる。
 5教科勉強しなければならないことと、3教科だけでよい状況とは勉強にかかる時間も倍ほど違う。
 苦しみが半減するほど、その効果は大きい。

 頑張ろうとする気持ちを手折ることになってしまうかもしれないと悩みは尽きないが、早い内に決めておくことでお互いを傷つけず、苦しめずにすむ。

 ただし公立高校よりも費用がかかることは間違いないので、ぜひ事前に情報収集をして、いくらかかるのか計算しておくことをオススメする。

受験を終えた1年後の今

 とてもビックリされると思うが、我が子は今「学年1位」である。
 入学後最初のテストで学年3位を取得したことに驚愕しつつも、喜び勇んで帰宅した。

 その後、もしかしたら1位取れるかも……と上位の背中が見えたところでやる気を発揮し、1学期期末から最後まで1位を死守した。

 お陰様で10段階評価の通知表は10が最も多く、平均は9点を超える。
 そんな成績を見たことがなかった息子は、ほくほくした顔で2年を目前に、自身でさらなる目標を掲げだした。
 中学とは雲泥の差である。

 なにより彼を奮い立たせている背景の1つとして、同級生の面々を見て「このままではダメだ」と感じたらしい。

 何をどう感じたのかまでは私にははっきりと分からないが、「俺、このままここでダラダラしてたらアカンってやっと分かった」と言い始めた。

 そばで見ていた私からすれば、やっとか……と思うところだが、気づいてくれて本当に良かったと心から思う。

 さらに私立高校の先生は、現在の学校の先生が良かったという側面もあると思うが、とても丁寧できちんと対応してくださる先生が多い印象である。

 私は何度か高校へ足を運ぶ機会があったが、どの先生に声をかけても、誠実さを感じる対応をしてくださる。

 はっきり言って、私の高校時代を振り返ると、イカレタ先生が多かった(笑)
 私の記憶では、高校の先生ほどカオスな人種がそろっている場所はないと思うほど、不思議な教師ばかりだった。

 水晶占いが得意で、いつも頭にはちまきをしている先生だとか。
 なぜか1年中革ジャンの先生だとか。
 私たちの卒業後、インドへ仙人になりにいったと噂のある先生だとか。

 どの先生を思い出しても、漫画に登場してきそうなくらいキャラの立った濃いめの先生しかいなかった。

 しかし、さすがは私立というべきか、こんなにまっとうな先生ばかりがそろう学校があるのかと感動すら覚えるくらい、きちんとした先生がたくさんいる。

 また、土曜日の自主学習にも付き合ってくれ、学校を開放してくださっていていつも勉強をさせてもらえる。

 昼休みも放課後も、分からない問題をひたすら質問に行っているようだが、嫌な顔1つせず質問に答えてくれると息子は言う。
 なんてすごい先生達なんだと、私は驚くばかりである。

 長期休み中の強化勉強でも、ほぼ毎日の授業があり、土曜日は塾講師の先生を招いて授業をしてくださる。

 公立高校へ行って大学受験前に塾に通わせるのと、私立高校にかかる費用がトントンと聞いたことがあるが、確かに大学進学を考えているのであれば同じくらいの費用感ではないかと思ってしまう。

 ちなみに私は、大学受験のための塾代は出せないと伝えており、また進学をしたいのであれば授業料免除の道はもちろんのこと、育英会などで学費を借りることも検討するように伝えている。

 はっきり言って、これ以上私立へ送り出してやれるほどのお金持ちではない笑

 それはそれで、自分で選んだ道だからよく考えるようにと伝えたところ、中学時代とは違って、ようやく話が伝わったと感じた。

 ……と、このようなことがあって、中学時代どん底の成績を取っていても、人はいつでも変わることができるし、置かれた環境で学ぶこともできるということを目の当たりにした。

 これからも私は、勉強しろとは多分言わない。

 けれど、勉強がなぜ必要なのかや、躓いた時に持ち合わせるべきマインドなどについては、引き続き教えてやれる立場にあれば良いなと思っている。

 ちなみに最近は、数学の質問はなくなったが、まだ現代国語について教えて欲しいと請われることがある。
 とはいえ中学の勉強より難しい……私も勉強し直そうかな、と焦る日々である。

 最後に。

 中学時代上位20位をキープしていたと偉そうに書いた私だが、高校入学後最初のテストで下から6位の座を獲得し、初めて親に報告できないと動揺した。

 さらに数学で再テストを言い渡され、英語の先生からは「頼むからもう少し勉強してくれ」と泣かれることもあった。

 人生山有り谷有り、である。

#受験体験記

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