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【2】ちいさなころ

私が生まれ育った町は、海があり温暖な地方都市でした。
何もかもが揃っているという訳ではありませんでしたが、有名な神社があるせいか県外からの観光客も多く、賑わいのある町だったと思います。

私の家の近くにも、とある女神様を祀った神社があり、幼い頃から何かあるとそこへお参りに出かけたものです。
今は少なくなりましたが、その神社のおみくじは箱を振ると棒が出てきて、巫女さんに渡すとそこに書かれた番号の引き出しからおみくじを出して渡してくれるタイプのものでした。

巫女さんがいつも優しく、子どもの私にもニッコリと微笑み丁寧に両手で「どうぞ」と渡してくれるのも好きでした。今でもその神社のおみくじとお巫女さんが大好きです。

ちいさな頃は、おみくじとお巫女さんは好きだったけど・・・
正直、神事は退屈という印象で好きではありませんでした。

でも、巫女の舞だけは違いました。
生まれ育った地は田舎だったので、地元の収穫を祝う【新嘗祭】や【年始の祭事】に参加する為に定期的に神社へ行っていました。

この頃は幼い事もあり、こういった神事が何が何だか分かりませんでしたが、私にとって・・・
【綺麗なおみこさんが見れる神社でのお祭り】程度の認識しかありませんでした。

私が巫女になったのは・・・
『幼い頃に美しくそして丁寧に接してくれた、このお巫女さんのようになりたい』そして『普段は優しくも、神事の際には美しくかつ厳かに舞う姿に虜』になっていたからなんです。

幼い頃の私は、おみくじと巫女が好きな少女でした。

そうそう・・・私の七五三もその神社で行いました。
満面の笑みを浮かべる父と、寄り添う母に手を引かれる私の3人での記念写真が今でも残っています。

その日の私はとても機嫌が悪かったようで、神社へ行く前からグズっており半ば無理やり連れて行かれたようなのですが・・・
「いざ神社に着くと急にご機嫌になったのよ」と母が何度も話してくれました。 
 
七五三に家族で参拝した時、私は早くおみくじが引きたくて仕方がありませんでした。

たくさんの親子が来ていて、お参りも順番待ち状態で飽きてしまった私は、何度も両親に「おみくじ!」とねだりましたが、「お参りが終わるまで待とうね」と言われてしまい我慢できずに、両親の隙を見ておみくじ売り場へ一人で向かいました。

けれどお金も無いし、どうしようかと困っていると、優しそうな男性が気づいて近づいてきました。
「お父さんやお母さんは?もしかしておみくじ引きたいのかな?お金、持ってないみたいだね、おじさんが引かせてあげるよ」・・・ハッキリとは覚えていませんが、このような優しい言葉を掛けたんです。

優しい声にホッとして、おみくじを引こうとした寸前、、、
どこからか『・・・ダメよ。今すぐにげて』という声が聞こえてきました。
その声は少し前に亡くなった、大好きだったおばあちゃんの声に似ていたんです。
私は思わず「ばぁばだ!!!」と声をあげてしまいました。

その声の大きさに気づいた不審な男性が、本当に私のおばあちゃんが近くにいると勘違いしたのか、頭がおかしい少女と思ったのかは分かりませんがその場から去ってしまいました。

結果的に何事も起きませんでしたし、あの時の男性も本当は悪い人では無い可能性もあったかもしれません。
当時は幼かったこともあり恐怖のエピソードだったという訳でもありません。笑

不審者だったかもしれない男性を私から遠ざけてくれたあの声は、もしかしたら祖母の霊だったのか、祀られている女神様なのか、はたまた気のせいなのかは今は分かりませんが、家に帰ってから私は両親に「ばぁばの声が聞こえたんだよ!」としきりに言っていたそうです。

この話は、今でも母とこの神社に行くと面白エピソードのように語られます。笑

ちいさな頃、父はよく私を膝に抱いては
「ちーは本当に可愛いね」と、私の頭をやさしく撫でてくれました。
 
 父は私をとても愛してくれていました。
 決して言葉にしたりはしなかったけれど、今の私にはわかります。
 父にとって、私は本当に可愛くて大切な女の子だったのだと。
 そして、それを裏付けるようなエピソードがあります。

私は5歳で幼稚園に入りました。
ほとんどが3歳になったら入園しているような町だったので、年長クラスから入ったのは私だけでした。

母「お父さんが、幼稚園は義務教育では無いから、行かせないって言い張って大変だったの。ちーが小学校で困らないためにって、やっと入園させたんだから」
小学生になってから理由を聞いた時、母は呆れたように話してくれました。

『父はできるだけ自分の手元から離したくなかったんだろうな』と今ならよくわかります。
 
幼稚園の先生たちはみんな女性で、園長先生だけが男性でした。
おひげがたっぷりの先生だったので、みんな「サンタ園長」と呼んでいました。
優しくて、自由時間によく遊んでくれるサンタ園長のことが、私も大好きでした。
私のことをすごく気にかけてくれていて、時々お迎えが遅いと園長室に入れてくれたりもしました。
「ちひろちゃんは、かわいくかしこいよいこだね」と言いながら、抱っこしてくれたものです。
男の子って乱暴なのかなと不安でしたが、意外なことにみんな優しくて、虫をやっつけてくれたり、物を運んでくれたり、とても親切でした。
運動会などで会う、お友だちのお父さんたちも、いつも私にとても優しくしてくれました。

ちいさなころの私は、みんなが私に優しくしてくれることが当たり前で、とても幸せな生活を送っていました。

※今日はここまとなります。お読みいただきありがとうございました。
次の投稿は、10月18日20時頃に・・・間に合えば投稿します。
間に合わなかったら翌日になっちゃう可能性もあります。。。


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