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【3】ランドセルのころ

※前回のバナー写真は私の家族写真ではなくイメージです。
分かり辛かったですよね。勘違いさせた方、ごめんなさい。


地元の小学校に入学した私は、引っ込み思案で、クラスの中でも割と目立たない方でした。
小柄で、運動も苦手で、だからといってすごく勉強が出来る訳でもなく、ごくごく平凡な子どもだったんです。
・・・とはいえ、学校は嫌いではなかったし、それなりに友だちもいたので、楽しんでいました。
 
平凡に生きていた私も、年齢相応に成長し、10歳を迎える頃には、父と一緒にお風呂に入ることに抵抗を感じ始めていました。父とはいえ裸を見られる事に抵抗を感じていたんです。

周囲の女の子たちも、「一人でお風呂に入ってる」とか、「お母さんと入ってる」など言い出していたのもあって、それが普通なんだろうな、と漠然と思っていたのです。

母にそのことを告げると、
「ちーちゃんも、大人になったのね」と微笑んで、
「自分ではお父さんに言いにくいと思うからお母さんから話しておくわよ。ちひろが寝た後にお父さんに話してみるからね」と言ってくれました。

当時は、リビング横の部屋に布団を敷いて川の字で寝ていたので、いつも通り21時の就寝時間に私だけが寝に入り、これから行われるであろう母からのお風呂の話を、聞き耳を立てて待っていました。

しばらくすると母から話が切り出され・・・

父「どうしてだよ!!!おかしいだろ」
母「でも、ちひろも4年生だし」
父「そりゃあ中学生になったらやめるよ。小学生の間はいいだろう?」
母「そうは言っても・・・」
父「ちひろはこの事で何か言っているのか?」
母「学校で皆がお父さんとお風呂に入っているって聞いたらしくて、それで・・・」
父「ちひろを呼んで来い・・・直接話を聞く・・・」
母「そんな事、アナタに面と向かって言える訳無いじゃないの!」
父「もういい!俺が呼んでくる!!!」
母「やめてっ!」
父「お前は黙ってろっ!」
・・・足音ですぐにこっちに向かってくるのが分かったので、必死に寝たふりをしました。

しかし、父が私に話し掛けてくる言葉は予想以上に優しい言葉でした。
父「ちひろ・・・寝ている所にごめんな。。。少し大事な話があるからリビングに来てくれるか・・・?」

寝たふりを続けるか悩みましたが、母が必死に話してくれていたこともあり、私はリビングに行くことにしました。

父「ちぃ……ちぃはパパが嫌いかい?」
私「……」
父「まだ小学生は子どもだろう?一緒にお風呂に入るのがそんなにイヤかい?」
そんなふうに言われて、自分の気持ちをストレートに言えるような、強い子ではありませんでした。怒られるなら、あきらめてしまおう。
私が我慢すればいいんだ、と思ってしまう子どもだったのです。

その時でした。
母「思っている事を全部言っていいのよ」
母もあまり強く言う性格ではなく、父に対していつも押さえつけられているようなタイプでした。
母だって頑張って言っているに違いがありませんでした。

・・・『言うしかない』
覚悟を決めました。

「わたし、もう、コドモじゃないのっ!」
勇気を出して言った言葉だったので、勢い余って自分でも驚くほど語気を強めてしまった事を今でもはっきりと覚えています。
父「ちぃ?」
 今まで、父に対してそんなに強く何かを言ったことがありませんでした。
 そんな私の様子に、父も何かを感じたようでした。
父「わかった・・・わかったよ。パパが悪かった、もう10歳だもんな、そうだよな」
 なだめるように、私の頭を撫でながら続けました。
父「でもそんな急に大人になられたら、パパさびしくなっちゃうよ」
 きっと、それは父の本音だったのでしょう。

けれども私にとってその愛情は重く、そしてどことなく自分に絡みついているような怖さを感じ始めていました。

それから父が忙しくなってきたのを幸いとばかりに、私は無意識のうちに父との接点を減らしていきました。

それでも、やっぱり仲の良い家族でありたいという想いもあったので、3人で過ごす時にはできるだけ父にも自然に接していたつもりです。

あの、思い出したくもない夏の出来事までは。

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