東京藝術大学 卒業・修了作品展2021
藝大の卒展に行ってきた。エネルギーに満ちていて心地のよい空間だった。特に印象に残った二作品について短く感想を書きたい。
まずは岩崎広大さんのインスタレーション「14の箱、659の標本」。とある博物館から廃棄される予定だったという蝶の標本に、風景が印刷されている。まずは廃棄から蝶の死を救っている。また、その蝶が飛んでいたかもしれない風景を弔いのように思い起こさせる。それでいて、実際には死んだ蝶を単なる画材のように扱っている。多層的に死と向き合うサイコパスのようなその独特の間合いが魅力的だった。
(写真:作者提供)
もう一つは、範潔敏(VAN Jiemin)さんのインスタレーション「今を生きる」。中国の祭りか何かに使われる、漢字の書かれた蝋燭を大量に溶かして塊にしたものに、チケット売り場の列の仕切りなどに使われるポールが突き刺さっている。蝋燭のもつ呪術性と、ポールの持つ祝祭性とが作品に力を与える。見たくないものをめでたいもので必死に隠しているような姿に批評性が宿る。
(写真:筆者撮影)
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