黄金の糸
春の陽の中には黄金の糸が混ざっている
それはわたしたちの目をおだやかに眩ませる
黄金の糸は束になったりほぐれたり
陽の中でゆらめき遊ぶ
束になればいっそう太くきらめいて
ほぐれればいっそうやわらかに遊ぶ
春風がざぁっと強く吹く日
ほつれていた黄金の糸はふつりと切れたりもする
切れはしになった糸は風に乗って
どんどんどんどん飛んでゆく
わたしたちの視界のはしに
まぶしさを残すのを楽しむように
小さな子らは小さな手を伸ばして
黄金の糸切れをつかもうと飛び跳ねた
つかんだてのひらの中には
一枚の桜の花びら
驚くことはない
黄金の糸は花びらにだってなれるのだ
春の陽の中には黄金の糸が混ざっている
わたしたちがその中を歩けば
糸は静かにからまって
わたしたちを春に留める
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stand.fm『ことのは・つれづれ』#2より
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