花筏(はないかだ)
私たちは生きていれば誰でも多くの死と出会う。
死は喪失だ。
心の中にぽっかりと穴が空く。
何にも代えられない穴がそこにある。
その存在が自分にとってどれだけ身近だったかで
穴の大きさは変わってくる。
時とともに埋まる穴もあれば、埋まらない穴もある。
けれど無理に埋める必要はない。
その穴でさえ大事な自分の一部なのだ。
そのぽっかりを抱えながら生きていくしかすべはない。
ただ、春が来るたびに、
頭上に満開の花を見るたびに、
風で落ちてくる花びらを少しずつそこに並べてみたいと思う。
はなむけの気持ちでもいい
空虚なままの気持ちでもいい
その人を想ってこぼれる涙もいつか花びらに変わり、
その穴の淵に溜まるだろう。
川にたくさんの花びらが落ち
表面を埋め尽くす花筏のように、
喪失は花びらを得て、いつの日か愛しさに変わる。
我が心の花筏
穴は大いなる川になり、
あなたを乗せて
遠く、旅立つ。