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味読感想5【百味ビーンズ】:0005


 百味ビーンズって今でもあるのかなと調べてみたら、USJのお土産にしっかり根を下ろしてたんですね。びっくりしました。
 USJのビーンズは残念ながらまだ食べたことはありませんが、ハリポタブームで賑わっていた頃、地元のショッピングモールでもグミ、ラムネなど量り売りのお菓子が流行で、もちろん百味ビーンズもありました。
 赤・黄・青のポップな原色から黒や茶色、毒々しいマダラ模様のつい食べるのを迷う見た目の粒を、指で恐るおそるつまんで食べて、ほっとしたりぎょっとなったり。
 食べた中で印象に残っていたものは、明るい茶色のアップルパイみたいな味と、真っ黒なビーンズは…髪染めのケミカルな臭いを固めたみたいな、とにかくものすごい味でした。

 美味しいのも不味いのもきっちりあるんですよね。手加減がない。


 『デリカシー体操』もまた、一見かわいいイラスト集ですが、よく読むと中々な毒を含んでいます。

文章だけいくつか引用させて頂きますが、ことばだけでも結構抉ってくるのです。
まずはこちら。

p284「苦しめ 苦しめ そして楽しめ」

耳をふさいで顔を歪めた人のスケッチなのですが、聞きたくないから聞こえないようにしているのか、でも聞こえちゃっているんでしょうね。おどろおどろしいけれど、何故だか目を逸らせない。


2つ目はこちら。


p98「自分のカラにとじこもるのは得意ですよ
ボクくらいになると もう人間とゆーよりは
もはや エビとかカニの仲間ですね」

こう語っている人は、けれども特に悲しそうな顔をしている訳でもなく、ちょっと自慢げです。一見閉じこもることは弱みとかコンプレックスに聞こえますが、この人にとっては強みなのかもしれない。


最後はこちらです。


p175「何にでも傷つくし どんなものからでも救われる」 

 やや俯き加減の子のイラストに寄り添うように書いてあるんだけど、すごく後ろ向きに救われるような気がします。確かになあ。どんなことにも傷つくなら、ふとした事でも救われていいんだよなあ。


そうかと思うと、

p182「レンゲの中の水位の違い」

についてのスケッチなど事物を立体的に捉えたのもあって、ヨシタケさんの探求心が垣間見えます。

 こうしたイラストが大体1ページに4〜5枚、それが288ページあるのでもうすごい数です。

 上に上げたイラストは特に好みなので、付箋を貼って何度も見返せるようにはしていますが、このイラスト集は一枚一枚丁寧に読むよりも適当にバッと開いて、その日にグッとくる一言を見つけるように読んでいます。

 この方法だともしかしたら、今後一生目に入ることのないイラストもあるかもしれませんが、まあ全てのイラストを覚えるなんて芸当もできないし、見たことのないイラストに出会える巡り合わせを信じてパラパラとページをめくる日々です。

 出会ったことのない味を求めて、カラフルなビーンズを一つずつ食べていくようなイラスト集です。


ヨシタケシンスケさんはこのイラスト集について前書きにこんな風に書いていました。


そもそも私はメンタルがとても弱く、
ちょっとしたことですぐに心が折れるのです。
だから、「世の中は見ようによってはおもしろいよ」
「捨てたもんじゃないよ」と、日々、自分をはげまし続ける必要があり
これらのスケッチは、いわば、世の中の
「どうでもいいこと」をどうにかして「おもしろがろうとした」
記録でもあるわけです。


この言葉に心を動かされたのがきっかけで、自分の別アカウントにてピンぼけ日記なるものも書き始めました。割と過敏に物事を見てしまい、事あるごとにムダにギスギスしていたので、とにかく視点をボヤかそうと思ったんですね。
こんな感じです。


ピンぼけ日記125
2020/04/18
新しいエプロンを買った。値段の割にデザインのいいもの。ただ一つ欠点があって、ポケットが股間の位置にきてしまい、物を入れると居心地がたまらなく悪い。


 今のところ、人間観察というよりは自分のポンコツぶりを晒す日記と化しています(あと、ちょっと受けを狙おうとしている哀しみがありますね)が、これを書いていると心に余裕が生まれるので続けられています。

 デリカシー体操は2015年に発行されたものですが、2019年に発行された『思わず考えちゃう』もお勧めです。
 現在も描き続けている膨大なイラストを、ヨシタケさんが解説してくれる一種の回答集となっております。
 



※ヘッダー画像はFoodieFactorさんからお借りしました。下記リンク先です。

Pixabay-キャンディ‐お菓子‐カラフルです



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