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映画『満ち足りた家族』(1/18鑑賞)

衝突に始まり衝突に終わる物語の発する問いに、強く揺さぶられた。
弁護士の兄と医者の弟。ときに夫婦四人で食事をし、子供同士も交流があるが、わだかまりを抱えていた。やがて子供たちの事件を機に、彼らの信念や関係は激しく崩れていく。

考えの違いや母の介護、長男/次男の差など、様々な面でぎくしゃくした兄弟の仲。
兄弟のみならず、夫婦、親子の間にも溝や摩擦は見て取れて、ひやりとする瞬間が度々あった。
さらに、とある一件では兄が加害者の弁護を、弟が被害者の治療を受け持っていて、相容れない空気がぴりぴり肌を刺す。

でも、子供たちの事件以後はいっそう凄まじかったんです。衝撃に困惑、混乱に波乱の中で、彼らの感情は激しく揺れ、振り回され、目まぐるしく覆る。

知られれば子供の人生が潰れる状況に置かれ、苦悩する親たち。

特に印象的だったのは兄の妻で、娘とは血の繋がらない継母の彼女は、むしろ最も向き合っているように見えた。また、今まで加害者に手を貸す立場だった兄は、被害者の存在と悲哀に目を向け行動を起こした。
一方、弟の妻は一貫して息子の味方であろうとし、被害者や遺族の苦痛を見てきたはずの弟には次第に迷いが生じていく。

真に子供のためを思うなら、どうすべきなのか。

その問いに、彼らの意見はぶつかり、ついには不可逆な衝突へと発展してしまう。あれは衝撃だった。

作中で幾度か目にした衝突の場面は、ブレーキを踏むべき時にむしろ加速してしまう衝動を見るようだったし、そこに繋がる感情や関係の動きも細かに描かれていて。
圧倒され引き込まれた一作でした。

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