_ギア-GEAR-_

★ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』(京都)

ノンバーバルパフォーマンス。
そう聞いて、どんなものか想像がつくでしょうか。少なくともわたしには分かりませんでした。
京都で公演が行われている『ギア-GEAR-』は、日本発×日本初のノンバーバルパフォーマンスを謳う作品です。ノンバーバルとは、「言葉に頼らない」こと。つまり、『ギア-GEAR-』にセリフは存在しません。役者のみなさんは、動作、仕草、表情などでキャラクターを表現していきます。そして、各々何がしかの“パフォーマンス”を行う。だから年齢や国籍の枠を越えて、広く楽しめる。
また、さまざまな仕掛けの施された舞台装置、音による表現、光やプロジェクションマッピングによる演出など、見どころ満点の作品となっています。

そんな『ギア-GEAR-』を、8/31に鑑賞してきました。わたしにとっては二度めとなります。


『ギア-GEAR-』の公演は、専用の劇場「ART COMPLEX 1928」で行われます。京都文化博物館などが近くにあります。

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もともとは1928年に大阪毎日新聞社京都支局ビルとして建築された1928ビル。その3階を改装し1999年にオープンしたのが、「ART COMPLEX 1928」です。『ギア-GEAR-』専用となったのは2012年だそう。
座席数はわずか100席ですが、その分ステージとの距離も近く、空間の一体感に一役買っている気がします。

こちらが舞台装置。
開演前など、上演中でなければ撮影が可能です。一枚にうまく収めきれませんでしたが、とにかく空間全体に、何か起こりそうなモノなんかが多数あります。非常にわくわくします。

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さて、『ギア-GEAR-』のあらすじをご紹介しますね。
まず、物語の舞台は古いおもちゃ工場。すでに人間はおらず、人間型ロボット「ロボロイド」たち――リーダー格の赤をはじめ、黄、青、緑の4体――が今もなお働き続けています。
ある時、かつてこの工場で作られていた人形「ドール」が彼らの前に現れ、しかも彼らと変わらぬサイズになって動き出してしまう……というもの。

ロボットであるロボロイドたちは、もともと動きに硬さがあります。一方のドールも、目覚めてすぐは身体に慣れておらず、非常にぎこちない。だから、出会ってすぐの彼らはある種コミカルで、ちぐなぐな印象を受けたりもする。
けれど次第に、ものすごく馴染んでいきます。一体感が生まれてくる。もちろん言葉は用いません。何かと興味を持ち動きまわるドールと、工場の装置を壊されたくないロボロイドとの攻防といった、やりとりの積み重ねがあるだけです。その中で動作や仕草、表情などにより、意図が見える。意思疎通が図られる。言葉を用いずとも、コミュニケーションを行っている。

すると、不思議とロボロイドたちに個性が見えてきます。登場した当初から外見で違いは分かりますし、なんとなく立ち位置だとか、役回りも見えてはくる。でも一層はっきりと性格がうかがえ、それぞれに特有のパフォーマンスも相まって、より魅力的なキャラクターになっていくんです。

ドールも、初めはまるで赤ちゃんのようでした。たどたどしく歩きながら、興味のあるものをまっすぐ追いかけていく。ロボロイドたちが困るのもお構いなしに、突き進んだりする。
それが、時に笑い、時に怒り、実に豊かな表情と愛らしさで観客を魅了していく。成長してチャーミングな少女になった、そんな印象でした。もちろん彼女にも、パフォーマンスの場があります。

これ以上はネタばらしになってしまうので、口をつぐみたいと思います。もし興味を持たれたならば、是非とも劇場で体感していただきたいですね。
鑑賞、と初めに書いたのですが、『ギア-GEAR-』には体感、の方が相応しいのかもしれません。作品を外側から眺めるのではなく、作品という空間そのものを味わうような、そんな醍醐味があるからです。

わたしが『ギア-GEAR-』に足を運ぶのは二度めのこと、だから大まかな展開は知っていました。どういう結末を迎えるかも、当然。
それでも存分に楽しめ、たくさん笑い、パフォーマンスには鳥肌が立ち、最後にはぼろぼろ涙をこぼしながら、盛大な拍手を送りました。涙って、悲しいときや苦しいときにも出るものだけれど、感情の種類によらず心を動かされたら出るものなんですね。何度めだって。

『ギア-GEAR-』の特色として、各パートを演じるキャストが複数存在していることが挙げられると思います。経歴もさまざま、特色も異なる。演じる者が変われば、キャラクターも決して同じにはなりません。パフォーマンスの演目にも違いが出たりします。
組み合わせを考えればパターン数は膨大ですし、観客さえも作品を構成する要素だとすれば、『ギア-GEAR-』はその時その時が“唯一の舞台”と言えるのかもしれません。
だからこそ、ふたたび足を運びたくなる。何度だって、楽しめる。

かく言うわたしも、次はいつにしようかなあ、と考えていたりします。京都には名所も多いですし、『ギア-GEAR-』と観光とを兼ねて、これから訪れる機会も増えそうです。