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読みきりの短編や、中編・長編の試し読み
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#ファンタジー

[試し読み]紅の石使い 第1話 天空の砦

 吹き荒ぶ風が顔を刺す。千切れそうなほど髪がうねる。感覚を失うほど皮膚が冷えていく。息をすることさえままならず、全身に大きな獣がのしかかるような風圧に耐え、薄く瞼を開くと、灰色の雲間を真っ逆さまに落ちていることを確信した。 *  そのときリックは迷子になった仔羊を探していた。父に言われ、数頭の羊を連れながら空を眺めていたときのことだ。リックの碧い目は白い半月が浮かぶ空を映し、ますます碧くなった。  流れる雲を目で追っていると、白い鳥の群れが滑らかに飛んで来るのが見えた。

[試し読み]モナート 第1話 おはよう、世界

 目が覚めたとき、私は少年になっていた。  ジュラルミンの台の上で身を起こすと、傍らには二人の人間がいる。ひとりはネイビーのスーツを着た眼鏡の中年男性で、もうひとりはモスグリーンのワンピースを着た白髪の老年女性だ。私はゆっくり首を回し、隣にある巨大な鏡に映った自分の姿を確認した。  瞳の色はサファイアのように青く、体は細身で肌は白い。プラチナブロンドの髪はボブカットにしてある。最初は少女と錯覚したが、骨格、体の凹凸、白と紺の水兵服に膝丈のショートパンツという格好から、十二