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[試し読み]紅の石使い 第1話 天空の砦

 吹き荒ぶ風が顔を刺す。千切れそうなほど髪がうねる。感覚を失うほど皮膚が冷えていく。息をすることさえままならず、全身に大きな獣がのしかかるような風圧に耐え、薄く瞼を開くと、灰色の雲間を真っ逆さまに落ちていることを確信した。 *  そのときリックは迷子になった仔羊を探していた。父に言われ、数頭の羊を連れながら空を眺めていたときのことだ。リックの碧い目は白い半月が浮かぶ空を映し、ますます碧くなった。  流れる雲を目で追っていると、白い鳥の群れが滑らかに飛んで来るのが見えた。