校正の本を読んだら逆に書けなくなった?校正の本のご紹介も。
わたしは自分の文章に自信が持てません。
自信が持てないのは、もちろん下手くそだから。でも下手くそなのは、あまり重要ではない。きっと死ぬまで下手くそだと思うから。下手くそは下手くそなりに自分の文章を書けばいいと思っている。わたしは誰にどう思われてもただ文章を書きたいのだから。
では、わたしが自分の文章に自信を持てない一番の理由は何か。文章を書くルールが曖昧なこと。
下手くそでも、ルールはきちんと知ることで正すことができる。下手くそなりに、ルールを守れば、世間のレールに乗ることができる。ルールを知らないと、ただのどうにもならないただの下手くそなだけで野垂れ死なないといけない。それはいやだ。下手くそでいい。下手くそなりに世に出たい。いつか。わたしなりに。
なんのことを言っているかというと、文章のルール、校正や校閲についてきちんと知識を持つことが大切ではないかと考えているのです。
校正とは、文章の作成された原稿の一字一句をくまなくチェックする作業のこと。
校閲とは、書かれた文章の内容に間違いがないか、整合性がとれているかなどを確認する作業のこと。
このどちらをも合わせてする人を校正者と言ったり、校正と校閲をする会社のセクションをまとめて校閲部とか校正部とか呼んだりするらしい。
例えば新聞は、固有名詞以外は常用漢字という国が指定している漢字しか使わないで新聞の文章をつくります。常用漢字にないものはルビをふったりひらがなで書いたりします。読者の投稿なんかも、あえて使った漢字が意味は合っているし間違ってはいないけれど、新聞のルールとしては間違った表記になるので、苦渋の決断で訂正した、と朝日新聞校閲部の方がまとめた本で読みました。誰でもが、読みやすく読めるためのルール、それが新聞の校正のルール。
対して小説は、常用漢字を使わねばならない決まりはなく、自由に漢字を使えます。読みやすさや、文章や文字のこだわりで漢字を使い分けられます。校正、校閲では、時代考証や、人物の立ち振る舞いが不自然でないかや、季節に合った植物かなど、文章の整合性が合っているかを細かく確認します。例えば、北海道のある地域で咲く花を文中で書いたら、本当にその地域で咲く花なのかを調べたり、江戸時代に表札を見て家を訪ねたとあったら、本当に江戸時代に表札があったのか、とかいう風に。
ほかにも商業出版、雑誌など、原稿のあるあらゆる場面で校正はなされています。
一字一句を見直して、内容の正誤を確認し、整合性も調べ、そこまでくまなくチェックされた原稿でも間違いがあって、間違いの内容によっては書籍が回収になることもあるそうです。大変なことです。
そんなに大変な工程を経て世の中には本が出ている背景があるわけです。そう思うと、自分の書く文章の正しさがわからないまま書き続けていくのは、あまりにも危ういのではないかと思ったのです。自費出版は、世に出してしまえば、おかしな文章はそのまま。文章を読んでもらいたいけど、体裁はめちゃくちゃで読みにくい。そんな本を出し続けても意味はないだろうと。
例えばわたしの初めてのエッセイ集はあれは酷かったんだな、と今思えば大後悔なわけです。
とにかく文章を書いてまとめて文学フリマで売ってみたい。それだけを考えて作った。だから出来上がった本は誤字もあった。PDF化に失敗して文章が1行繰り返し印刷されていた。奥付のルールだって見よう見真似で作った。表紙もあればいい、くらいの。
今思えば自分よがりの自分だけのための自己満足のための本だったんだなと。とにかく恥ずかしい限りだ。
文学フリマの会場で、周りの方の本を見て、自分の本をかえりみて、あまりに違う出来映えに、ああこれではいけなかったんだ、と反省した。今、あの恥ずかしさは、一体何だったのか、何が間違いだったのかをはっきりと理解できる。
本は読んでもらうためのもの。読んでもらう人のためのもの。体裁はきちんと整えて、読んでもらう人にお届けしなければならない。そのためのルールがわたしは非常に曖昧だったといえる。これはよくないだろう、という気持ちに今はなっており、最近では校正にまつわる本を読んでいる。
文章のルールなんて堅苦しい内容かと思いきや、これが果てしなく面白かった。文章の海に思い切りダイブしたら、そこには果てしない未来が広がっていた。ワクワクしながら読んだ。わたしの求める答えは確かにこの先にある。読む手がとまらない。教えてほしい、全てを。校正の本は楽しかった。選んだ本が良かったのもあるかもしれない。
ただ、わたしは校正者になりたいわけではないので、文章を書き、原稿としてどのように仕上げ、校正と校閲をすべきか学べればそこまででよいと思っている。だから少し学んでいこうと思う。自分で校正、校閲が完璧とは言わないまでもできるくらいには。
しかし、校正のことを知れば知るほどに、書いた文章の体裁が整っていないのに、ほいほい更新するのはいかがなものなのか、という気になってしまう。気にしすぎ笑
下手は下手なりに書こう。すぐは上手くならない何ごとも。のんびりやっていこうと思います。それがわたしの文章に変化をもたらしてくれたらいいなと思いつつ。
面白かった校正の本はこちら↓
「校正という仕事〜文字の海をゆき 言葉の海をわたる」
この本は、校正に興味のある人、これから校正を学びたい人、校正のことを知りたい人に向いている本です。校正の先生が校正の学生に校正のプロに話をしてもらおうと、雑誌、DTP、書籍、商業出版など、の名のある方に講師をお願いしたら、とても良い話を聞けたので、これは本にしようとまとめられたものです。
ほとんどの先生が自分の失敗談をふんだんに例に取り、校正の心構えを教えてくださっている、わかりやすいフランクな内容なのに、校正の歴史や、辞書の使い方、種類、今と昔の校正の違い、校正者になるにはどうしたらよいか、など、校正のことがなんとなくマルっとわかるような内容だ。その内容もさることながら、面白いのは、各章ごとに話される先生の話した感じで文章がまとまっているのがよい。この本をまとめた人が内容を噛み砕いてハウツー本にしたのではなく、あくまで、登壇して話してる先生がそこで話しているかのような臨場感がある。だから校正の話に熱があり、わたしにもよく伝わった。面白かった。ただの読み物としても面白い。ぜひおすすめしたい本。