あなたといつものテーブルで(短編小説)
未来の日本、東京21××年
「あなた、朝ごはんですよ。」
70もすぎた老婆が、夫を朝ごはんのテーブルに呼ぶ。彼女の夫は有名な元物理学者の権威だ。5年前、脳出血で帰らぬ人となった。
「ああ、いまいく。」
しかしよばれた夫は機械の音をさせながら近づいてくる。
ほら、ここに座って。優しく妻が食卓の椅子をひくと、夫はぎこちない動きで腰をかける動作に入った。
座ると新聞を広げ、頭をかく。新聞を見たまま、頭をかいた手で湯呑み茶碗に手を持っていく。湯呑み茶碗を持って口に運ぶ。湯呑