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口之島の空

旅の空は決まって美しい。
仕事や用事に追われている日常とは違い
ゆとりある旅では、雲の形や空の色が印象に残りやすいからだろうか。

2年前の夏、口之島を訪れた。
鹿児島市から約200キロ、船旅でしか訪れることのできない小さな島だ。
抜けるような青い空と透き通った海。
朝日も昼の青空も夕日もすべてが美しく、飽きることなく空を眺めた。

しかし、この美しい島もかつては戦火にさらされた。
空襲は激化し、戦闘機の姿を警戒しながら空を仰いだ時代があったのだ。
敗戦後は北緯30度線が引かれ、本土復帰まで口之島は国境の島となる。

案内をしてくれた島人が“地球影”を見た話をしてくれた。
日の出や日没時、太陽の反対側の地平線に地球の影が映し出される現象だ。
見通しのよい小さな島だからこそ見られるのだろう。

島で見る夕焼けはやはり美しかったが、複雑な気持ちで空を眺めていた時代もある。
旅の空は、遠くない昔に思いを馳せる時間をくれた。

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