ヨルダンの旅日記 VOL3 ペトラ編
2019年4月
ペトラ内のレストランは2つある。「右か?左か?」とガイドさんから尋ねられる。左側だったかな?と思いスケジュール表を見せた。ガイドさんが両方のレストランに連れて行ってくれて、受付の人に確認してくれた。なんて親切なんだろう。レストランの中で「ありがとう さようなら」をした。お陰様で私は、スムーズにお腹を満たすことができた。
レストランの近くのトイレはとても混んでいた。しかもトイレットペーパー切れである。トイレットペーパーの芯がそこら辺に転がっている。「あぁ、私には紙がある」と最高な気分になる瞬間だ。躊躇なく個室に入る事ができる。旅の際は、是非、トイレットペーパーをお持ちください。もし、捨てる場所がない場合は飛行機内にあるエチケット袋とジップロックをご活用ください。
日本のトイレ事情がいかに素晴らしい!!と感じるのが「旅」である。
午後からは、ロバに乗ることにした。近くにジャックスパロウの風貌をした青年とロバが沢山いる。「どこにいきたい?」とすかさずジャックが声を掛けて来る。「どこでも行くよ」とセールストークが炸裂する。「エド・ディルまで行きたい、片道だよ」と伝えると、22JDだと言う。交渉人になる時だ。「高い、他の人に聞いてみるよ」と答えると、急に10JDに値下げしてきた。私は相場を調べてなかった…と思いながら、7JDを見せて「これでどう?」的な顔をしてみた。精一杯のネゴシエータを演じた。(1JD=¥150位)
そうすると、ジャックは「オレの目を見ろ」と言う。見つめると、澄んだグリーンの綺麗な瞳である。心の中で「イケメンだなぁ。なんで見つめ合うんだろ?」と思いながら、小さな黒い瞳で、見つめ返した。精一杯、負けない気持ちで見つめ返した。全然、ロマンチックじゃない。すると、ジャックは私の手から7JDをサッと取りあげて、ロバに乗るように言った。周りのロバ引き青年は「あの子は日本人だろ?」とこそこそ話している。「チップをもらうからな!!!」とニヤリと笑いながら、ジャックが言った。
ロバにのると、少年が後からロバを笛で誘導している。ジャックのチップ作戦は、この子か…。私がカメラのキャップを落とした時、気づいて拾ってくれた優しい少年である。私が乗ったロバは穏やかな気性なのか、岩側に沿って歩いてくれた。このロバはなんて可愛いんだろうと思いながら、揺られていたが、そもそも少年がそうさせていたの知れない。グイグイ登っていくロバに悲鳴を上げていた日本人の女の子達を見かけた。
途中、少年が道ばたの店の前でロバを止め「待ってて」と言った。ロバから降りると、店のおばさんが、「こっちで待ってなさい」と手招きするので、店の奥に入らせてもらい、写真を撮ったりして10分程度だろうか、待っていた。あの少年は戻ってくるのか?と思いながら。
少年は階段を駆け上り戻ってきた。また、ロバに揺られて、しばらく行くと、階段の踊り場のようなところで止まった。少年は「ここで終わり」と言う。まだ階段は続いているけれど、ロバが踊り場に沢山いたので、ロバステーションなのだろう、この先は皆、歩くのだろうと納得した。そして、次はチップだ。少年が期待の眼差しで私を見る。そっと1$を渡した。悲しそうな顔の少年。
こんな階段をずっと登ってきた少年とロバ。そんな悲しそうな顔をされると、さすがに心が痛む。しかし、ついに「10$ないの?」である。きたきた、金額指定のチップ。ジャックのあのニヤリとした顔も思い出す。私は、「明日、日本に変えるから、もうお金がないよ」と話しながら、空っぽのお財布を見せた。なんとも姑息な手段である。少年は「空港まで行くから」「ホテルまで行くから」と必死に食いついてくる。私は「あなたはできない」と言い、別れを告げた。
そしてエド・ディルに向けて階段を登り続けた。レストランまで案内してくれた、ガイドさんにチップをお渡しすれば良かったと思いながら。
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