保育リスクマネジメント実践とは?
国際標準化機構(International Organization for Standardization)、略称ISO31000:2018の序文には「この規格は、リスクのマネジメントを行い、意思を決定し、目的の設定および達成を行い、並びにパフォーマンスの改善のために、組織における“価値を創造し保護する”人々が使用するためのものである」と記されています。
では、保育における“価値”とはなんでしょうか?
保育における価値とは「保育所保育指針第1章総則 1保育所保育に関する基本原則(1)保育所の役割ア」に示されている通り、まずは「入所(園)する子どもの最善の利益」を考慮することです。そして、その価値を創造し保護する“人々”が保育士をはじめとした保育所・保育園・認定こども園・幼稚園などで働く保育者です。
しばしば、リスクマネジメントと聞くと事故を未然に防いだり、危機が発生した時の対応を学んだりすることと捉えられがちです。しかし、入園する子どもたちの最善の利益を考慮することを想像し、保護するという事は、すなわち保育の質の向上に繋がる最も根本的な実践となります。
私たちちどり保育園も保育リスクマネジメントを実践し始めた際は、子どもたちの怪我の予防、重大事故の発生を防ぐことに重点を置いていました。しかしながら、実践し続けていくことによって、単なる怪我の予防だけにとどまらず、保育を実践する保育士(者)の質の向上につながり、結果的にちどり保育園自体の保育の質の向上に繋がっていると大いに実感しています。
保育の世界においても、保育園(所)に入っている子どもたちの事故や事件を未然に防いだり、危機が発生した時の対応を整えたりする「事故予防や危機対応」を取り入れようとする動きが活発になっています。しかし、事故予防や危機対応はその実践した効果が見えずらく、中には「効果がないから止める」と継続して実践することを止めてしまう施設もあります。
一般企業においては、既に事故予防や危機対応に限らず“リスクマネジメント”を取り入れ、各企業における“価値”を想像し、保護することを実践しています。そして、その効果も様々な媒体で紹介されています。しかし、保育の世界においてはリスクマネジメント実践を取り入れる施設はごくわずかであり、危機対応に関する取り組み自体も整備されていない施設も見受けられます。だからこそ、先進的な取り組みである保育リスクマネジメント実践をいち早く各保育園(所)で取り入れて頂き、他の施設との差別化を図る必要性があるのです。
私たち日本社会においては少子化の抜本的な歯止めが効いていないにも関わらず、年々保育に対する需要、要求は増加の一途をたどっています。しかし、いつか必ず保育の世界においても競争原理が働き、園児や職員(保育士)の奪い合いが発生すると考えられます。そのような状況となった際、選ばれる保育園(所)となるためには、質の向上に寄与する保育リスクマネジメントを実践している施設である必要があります。そこで、ちどり保育園における独自の保育リスクマネジメント体制を立ち上げ、実践し、活用したことで、どのような面における保育の質の向上につながったのか?ということをより多くの保育関係者の方へ気軽に見て頂けるようにしました。
これから事故予防、危機対応に取り組もうと検討されている保育関係者の方をはじめ、研修会の企画や実践、そして選ばれ続ける保育園(所)となって頂くための一つの道具として、多くの方々に役立ててほしいと思い、ちどり保育園が実践している「保育リスクマネジメント実践」を紹介しています。