【選挙ウォッチャー】 中野区長選2018・分析レポート。
世の中が新潟県知事選で盛り上がっていたため、実は、あまり注目されていなかった中野区長選なのですが、久しぶりに「正義」が勝つ歴史的な選挙となりましたので、久しぶりに晴れやかな気持ちでレポートを書くことができます。政治や選挙に無関心を極めるあまり、全国各地で利権クソ野郎のやり放題が続いているわけですが、6月10日の中野区長選では区民の不満が大爆発し、新区長が誕生しました。もともとは民主党系の区長だったのに、利権のおいしさに目覚めてしまい、自民党や公明党と手を組み、続々と中野区の財産を壊していった田中大輔さん。あまりに区民の怒りを買い過ぎた結果、歴史的な選挙になってしまいました。
田中 大輔 66 現 自民・公明・維新推薦
市川 稔 63 新 中野区議
酒井 直人 46 新 立民・共産推薦
吉田 康一郎 50 新 ネトウヨ元都議
今回の中野区長選は、いろいろな要因が重なり、立憲民主党の単独公認候補が「区長」になりました。「立憲民主党に風が吹いたのでは」と考える人もいるかもしれませんが、どうやら現地で暮らしている人たちの話を聞くと、立憲民主党だから当選を果たしたわけではなく、現職の田中大輔さんがあまりに区民から嫌われ過ぎたために、一番まともに見える酒井直人さんに投票した人が多かったようです。立憲民主党を応援している人たちにとっては悲しいお知らせですが、立憲民主党の時代がやってきたわけではありません。住民の声を無視して、東中野駅前の桜並木や平和の森公園、中野サンプラザといった「文化」を破壊したことが、サブカルチャーを愛する中野区民に嫌われていました。安倍晋三総理も含め、いろいろな悪政を強行する人はいるのですが、「それだけは絶対にダメ」という中野区民の一線を越えてしまったのだと思います。
■ 東中野駅前の桜並木の伐採
いくら消費税が高くなったり、能力の高い人の給料に上限が定められても、日本人はあまり文句を言いません。なので、特定の大企業のためにやりたい放題を続けている安倍政権ですが、この状態も、ある一線を踏み越えてしまうと、選挙に大きな影響をもたらすことがわかりました。どれだけ税金を高くしても、どれだけ弱者が痛めつけられても、自民党や公明党から推薦されている候補は強い。しかし、生活に根付いた「文化」を壊された時、人々の感情は一気に爆発し、「強い」と言われた現職が敗れることにつながるのです。今回の中野区長選で証明されたのは、「絶対に越えてはいけない一線がある」という話です。
田中大輔さんが中野区民から嫌われるキッカケとなったのは、やはり東中野駅前の桜並木の伐採だと思います。住民がどれだけ反対しても、まったく聞く耳を持たずに桜を伐採してしまう。その傲慢なやり方に中野区民は驚き、そして反感を抱くようになりました。近隣住民は長年にわたり、桜並木とともに人生を歩んできたのです。季節の移ろいを桜並木の色で愉しんできたのですが、中野区民の人生に深く入り込み、寄り添って生きてきた桜を簡単に切ってしまう。住民は「年老いた桜の木が危険だから」という言い分にも理解を示し、危険な木を切ることそのものに反対しているのではなく、切るのであれば植えてほしいとお願いしていたのです。ところが、手入れの面倒臭い桜の木なんぞ、なくなった方が効率が良いのです。区民の心を潤わせるために手間をかけるということを「無駄」としたのです。
■ トドメを刺したのは「中野サンプラザ」の解体計画
収容人数が2222人の「中野サンプラザ」を解体し、1万人規模のアリーナを建設しようというのが田中大輔さんの考えでした。コンサートを見に来る客が5倍になれば、経済効果も5倍になると考えたのかもしれませんが、単純にハコが大きければ良いという問題ではないというのが「中野サンプラザ」を愛する人たちの理屈です。立憲民主党の枝野幸男代表が街頭演説で熱弁を振るっていましたが、「収容人数が2000人だからこそ、中野サンプラザは文化になった」というのです。今のご時世、1万人の会場を埋められるアイドルやアーティストは数えるほどしかいません。多くの新進気鋭のアーティストたちが、ひとまず目指せる現実的な聖地が「中野サンプラザ」であり、この「中野サンプラザ」を成功させられるかどうかが、さらなるビッグアーティストになれるかどうかの道。アーティストの心に残るからこそ「文化」になったのです。「中野ブロードウェイ」とともに、多くの文化を創り出してきた「中野サンプラザ」を解体し、安易に1万人アリーナにしてしまうという計画は明らかな愚策。素人が利益を出そうとして文化を壊す構図が、文化を愛する中野区民たちに嫌われたのは言うまでもありません。
■ 「NHKから国民を守る党」の候補者は断念した
松戸市長選に続き、中野区でも区長選に立候補するとしていた「NHKから国民を守る党」ですが、最終的に区長選への立候補を断念し、和光市議会議員選挙に回ることになったそうです。「NHKから国民を守る党」は最初からそうですが、地域への愛みたいなものは最初からありません。最初から勝てる見込みはありませんでしたが、返ってこないかもしれない供託金100万円を出してまで立候補するメリットが見当たらなかったのかもしれません。
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