【選挙ウォッチャー】 中野区長選2018・平和の森公園をめぐるハコモノ建設問題。
サブカルの街として知られる東京都中野区。
たくさんのお笑い芸人が暮らしている街で、新宿から近いのに家賃が安く、さまざまなジャンルのオタクが好む専門店が数多く立ち並び、知的好奇心を満たしてくれる面白い街です。実は、大人になって「選挙ウォッチャー」なんていうものになってしまった僕は、東京都中野区生まれ。だから、東京23区の中でも個人的に愛着のある街なのですが、この街で今、都心の自然を壊し、無駄なハコモノを作る計画が進んでいます。ニュースで報じられることもなく、当たり前のように無駄なハコモノが作られる現実。普通に生活していたら気づくこともありません。今度の中野区の選挙は2018年6月10日投開票ですが、それまでに何が起こっているのかを再確認しておく必要があります。
■ 誰も望んでいないのに競技場や体育館を作る
東京五輪に合わせ、ここに競技場や体育館を作る計画を立てています。東京五輪の際にも練習場として使われる計画になっているそうですが、それはあくまで中野区が言っているだけで、オリンピック委員会とどれだけ連携ができているのか分かりません。仮に使われることがあっても、たったの数週間のために街を丸ごと変えてしまおうというのですから、かなり乱暴なことを言っています。
そもそも住民は競技場や体育館を望んでいるのでしょうか。平和の森公園の体育館には86億円、今回の工事には108億円をかけ、森林を伐採し、300mトラックのある競技場を作る計画です。これだけのお金をかけるのであれば、中野区に不足していると言われる児童館を作るお金に使えたはずですし、社会福祉にお金を回すこともできたはずです。市民団体が2016年に実施したアンケートによると、陸上トラックを建設する草地広場については91%が「草地を残すべき」と答え、陸上トラックを設置するべきと答えた人は2%しかいませんでした。野球場が拡張されるスポーツ広場については85%の人が「そのまま維持するべき」と答えていて、大人も野球ができるように拡張するべきだと答えた人は5%しかいませんでした。未開園の部分については「樹林に囲まれた緑地帯にするべき」と答えた人が77%で、「新体育館を作る」と答えた人は14%でした。これだけ税金の使われ方が問題になっている時代に、2%の人のために陸上トラックを作り、5%の人のために野球場を拡大し、14%の人のために新体育館を作るという政治が行われているのです。どれだけ区民をナメているのかがわかります。
誰がこんな政治をしているのかと言うと、田中大輔区長を中心とした利権野郎どもです。これが区民の悲願だというなら「良い政治」と褒められるかもしれませんが、区民が誰も望んでいないハコモノを建設するのは、業者とズブズブの関係にあるからに他なりません。国会議員になると、どう考えても採算の取れないリニアモーターカーに税金でお金を貸し、談合している大手ゼネコンにたっぷりお金を払っているのです。今年6月には中野区長選が行われますが、「特に不満がないから」という理由で田中大輔区長に投票するようなことがあると、今後も税金がアホみたいなハコモノに使われることになります。
■ 300mの非公式なトラックを作る茶番
オリンピックとパラリンピックを合わせて2ヶ月ほど。そのために豊かな森を削って作ろうとしている陸上トラックは300mの非公式なサイズです。敷地面積の関係で300mサイズしか作れなかったわけですが、大会などで使われる一般的な陸上トラックは400mサイズなので、いくら練習とはいえ、プロの陸上選手が使えるものではないのです。つまり、東京五輪に合わせて陸上トラックを作っているという建前になっていますが、実際には「オリンピックのための陸上トラックだと言えば文句がないだろう」としか考えていないのです。短距離走ともなると「コンマ00」どころか「コンマ000」の戦いをしているわけで、オリンピックという一世一代の晴れ舞台の直前の非常に重要な練習で、一流のアスリートが西武新宿線の沼袋駅の近くにある非公式300mトラックで調整をするでしょうか。プロのアスリートをバカにしているのでしょうか、それとも田中大輔区長がバカなのでしょうか、それとも両方でしょうか。
オリンピックが終われば、沼袋駅前の閑静な住宅街の一角にひっそりと佇む誰も使わない陸上トラックになってしまうのですが、区の説明によれば「地元の中学生たちが使ってくれるかもしれない」とのこと。しかし、周辺の中学校で陸上部があるのは2校のみで、わざわざ沼袋駅までやってきて非公式なトラックで練習をするでしょうか。しかも、本気で速く走りたい人たちにとって、このトラックで練習するのは圧倒的に不利です。普段使っているトラックが通常より長いというなら、正規サイズのトラックで走った時に短く感じるかもしれませんが、正規のトラックで走ると長く感じてしまうのです。つまり、300mという中途半端な非公式サイズの陸上トラックなんて誰にも求められていないので、いくら利権のためとはいえ、もうちょっとマシなアイディアはなかったのかという話です。
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