【選挙ウォッチャー】 沖縄県議選2020・那覇市選挙区レポート。
本当にギリギリのギリギリまで行くか行かないかで迷ったのですが、熟考の末、やっぱり沖縄県議選を取材することになりました。やはり心配なのは新型コロナウイルスに感染することであり、沖縄県は新規感染者ゼロが30日以上続いていましたが、油断することなく、アルコール消毒液、マスク、フェイスシールドを持参し、ホテルに到着した瞬間に風呂に入り、部屋着に着替えるなど、可能な限りの対策をして取材に挑むことにいたしました。玉城デニーさんが知事になって初めての県議選。選挙は4年に1回しかありませんので、次の沖縄県議選は2024年になります。ただでも新型コロナウイルスの影響で全世界的に経済が停滞しており、1年先さえ見えないくらいに先行きは不透明です。1年後の日本がどうなっているのかさえ見通せない中で、4年後の日本がどうなっているのかなんて全然わかりません。沖縄でずいぶん長いこと争点になってきた辺野古基地だって、もしかしたら完成しないまま放置されるかもしれません。観光によって支えられてきた沖縄の経済が低迷するのは避けられない中、ちゃんと考えられる県議を生み出せるのか。まずは大激戦の那覇市選挙区から順番に見ていきたいと思います。
渡久地 修 67 オ現 日本共産党
嘉手苅 生佳 43 へ新 無所属
依田 啓示 46 へ新 無所属
新垣 淑豊 44 へ新 自民党
喜友名 智子 43 オ新 立憲民主党
當間 盛夫 59 へ現 無所属
崎山 嗣幸 72 オ現 社民党
山川 典二 65 へ現 自民党
仲村 家治 58 へ新 自民党
西銘 啓史郎 62 へ現 自民党
山田 マドカ 40 オ新 無所属
比嘉 京子 69 オ現 沖縄社会大衆党
上原 章 64 へ現 公明党
翁長 雄治 32 オ新 新しい風・にぬふぁぶし
比嘉 瑞己 45 オ現 日本共産党
垣花 豊順 86 へ新 無所属
「オ」は「オール沖縄(県政与党)」で、「ヘ」は「辺野古基地を推進する自民・公明・無所属ネトウヨ(県政野党)」となっています。那覇市選挙区の定数は11で、それに対して16人が立候補しているので、この中から5人が落選するという選挙になっています。注目は、前沖縄県知事の翁長雄志さんの息子である翁長雄治さんが県議選に挑んでくるということ。今回初めて立憲民主党も候補者を出しており、無所属で立候補している山田マドカさんがどれだけ健闘するのかも見どころです。一方、デマばっかり書いているネトウヨの依田啓示さんも那覇市選挙区から立候補しており、ちゃんと落選するのかどうかは見届けたいところです。
■ 重度のネトウヨ・依田啓示さんは余裕の落選
多くの方が「こいつだけは絶対に当選させてはならない」と見守ってきたのが、重度のネトウヨをこじらせている依田啓示さんだと思います。沖縄の有名なデマ野郎・ボギーてどこん氏と並ぶ「琉球デマ界の巨匠」であり、過去には暴力事件も起こしています。もともと沖縄北部で暮らしていた人物ですが、国頭郡では勝負にならないと判断したのか、なぜか那覇市選挙区から立候補してきました。どうせネトウヨなので票を取れないだろうと思われていたのですが、選挙期間中は意外にも「当落線上にいる」と言われており、わずかに当選の可能性がありました。こうなってしまった背景には、中国企業のカジノ参入を巡り、日本維新の会の下地幹郎さんが献金を受け取っていた事実が発覚。下地幹郎さんを中心とした沖縄の日本維新の会は解散に追い込まれ、維新に投票していた人のうちの一部が依田啓示さんに流れると予想されること。那覇市には自衛隊員が多く暮らしており、自衛隊員のネトウヨ率が高く、依田啓示さんが支持されていること。NHKから国民を守る党の立花孝志が票を集めたように、YouTubeを見ているB層やD層の若者を中心に票を取ってしまう可能性があることが当落線上にいると考えられる理由でした。誰だって情報の取り方が浅く、うっかり間違えたことを発信してしまうことはあると思います。しかし、誰かを貶めるために、本人さえ嘘だとわかっていながら情報を発信し、何一つ訂正しないような人間が議員になるのは大変危険です。根っからの嘘つきが議員になると議会をハチャメチャにされてしまうことは立花孝志の例を見ていただければ分かると思います。思想が違うことは許容できても「デマ野郎」は許容できないのです。
キャッチフレーズは「無限大、無着色、無所属」。しかし、依田啓示さんには思いっきり色がついています。もしかしたら、その色はナチュラルについているネトウヨ色なのかもしれませんが、天然でそれだけ色濃いネトウヨの色がついているのだとすると、これはずいぶん酷いことになっています。隣人とのトラブルでぶん殴った時にできるアザみたいな色をつけながら「無着色」と言われても、「どの口で言っとんねん!」としか思わないので。
さて、依田啓示さんには、とても大きな謎があります。それは、どこにこれだけのお金があったのかということです。今回、依田啓示さんは、ゆいレールの奥武山公園駅前の太い幹線道路に面した一等地に選挙事務所を構え、夕方にはそこで手を振るような選挙戦略を展開していました。沖縄県議選の選挙期間はたったの9日間です。通常の市議選よりは2日ほど長いですが、それでも短期決戦であることに違いはありません。後援会組織がしっかりしていて、財界のサポートもあって、潤沢な資金力がある候補ならともかく、ほとんど個人戦をしているような候補がこれだけの一等地に選挙事務所を構えるというのは、どこかの社長でよほど資金力に溢れているような人でない限りはなかなか難しいと思うのですが、依田啓示さんはずいぶんとお金をかけている印象です。しかし、依田啓示さんにこれほどの資金力があることは想像ができません。YouTubeの再生数はどの動画も1000回台。2000回以上再生されているのは数えるほどしかなく、これでYouTuberを名乗るのはかなりダサい状態です。広告収入で大きく稼いでいるようには思えず、どこにそんなお金があったのかと、多くの人が首を捻っている状態です。
「とにかく激熱ユーチューバー」や「笑顔が一番の特効薬」など、ユニークなキャッチフレーズを並べる依田啓示さん。看板にもお金をかけ、夜でも看板が見えるように照明まで配置されています。看板を設置するだけでもお金がかかるのに照明までつけている。選挙カーもしっかり用意され、中にはテレビモニターが設置され、そこで依田啓示さんの動画が映っている。ざっくりと数百万円はかかっています。地元の人たちは、「左翼による妨害で経営が成り立たなくなった」という口実で集めたカフェ再建のためのクラウドファンディングのお金が投入されているのではないかと噂していますが、そもそも依田啓示さんが経営していたカフェは、東村という超マイナーな土地にあり、沖縄にやってきた観光客が行こうとすると片道で3時間ほどかかる所にあります。よほど何かで有名にならない限り、わざわざ足を運ぶ人がいない立地なので、そうなってくるとご近所さんが集うようなカフェにするしかないのですが、そのご近所さんとトラブルになっている上に、依田啓示さんこそ「ネトウヨ活動家」なのです。口を開けば左翼がどうという話をしている依田啓示さんなので、そんなヤバい奴の店で食事をしたい人はいないのです。沖縄県民投票で示されたとおり、「辺野古基地の建設反対」というのは多くの沖縄県民たちの民意であり、もはやイデオロギーに基づく話ではありません。依田啓示さんは、それらをすべて「左翼」のせいにしている、おかしな活動に参加しているオジサンになってしまったのです。そんな奴が経営しているカフェが、最初からうまくいくはずがありません。左翼に営業妨害されているのではなく、単純に経営者としての能力が低いだけではないでしょうか。
看板には「知ることから始めよう」と書いてあり、僕も同じことを思って活動していますが、依田啓示さんの主張は「テレビや新聞は嘘ばっかりだからネットメディアを信じるべきだ」というものであり、僕は「テレビや新聞の情報のみならず、もっと幅広い情報に触れるべきであり、中でも『自分の目で見ること』が最も確かな方法である」と主張しています。真実がネットにしかないというのは大きな間違いです。テレビや新聞にも真実はある。だけど、どれも時間や文字数に限りがあるため、本当は重要な「端っこにある情報」が伝えきれていないだけです。例えば、沖縄県議選に立候補している人の中で翁長雄志さんの息子は追いかけても、依田啓示さんのような再生回数が1000回台の自称・YouTuberを追いかけるメディアは少ないはずです。だけど、沖縄において、依田啓示さんのようなデマ野郎の存在は「象徴的な光景」です。まさに「テレビや新聞が伝えないけど重要な情報」というのは依田啓示さんが立候補し、そして、落選しているということなのかもしれません。
その自覚があるかどうかは知りませんが、依田啓示さんは「左翼がヤバい」と主張する以前に、多くの人から「依田啓示がヤバい」と見られています。ネトウヨは「辺野古基地に反対する奴は中国の手先」だと言いますが、多くの人が辺野古基地に反対している理由は「新しい基地を作らせたくない」というシンプルな理由です。美しい海を埋め立ててまで平和とは真逆の基地を作ることが、太平洋戦争で多くの命が奪われた「平和を願う島」で強行されていることに疑問を感じているのです。そのシンプルな沖縄県民の気持ちを捻じ曲げ、「中国の手先」だとか「日本を壊したい左翼」だとか言っているのですから、どちらがヤバいかは一目瞭然です。ぶっちゃけた話、依田啓示さんは、ほんのごく一部のネトウヨから支持されていても、それ以上に多くの人から軽蔑されています。「NHKから国民を守る党」と同じようなカテゴリーにいる人で、左右のイデオロギーではなく、まずは「政治を蝕むカルトの阻止」を訴える僕としては、依田啓示さんの政界進出は、無料部分でお伝えするぐらいの危機的なトピックスです。そんな人物ゆえに、今回の沖縄県議選で下手に依田啓示さんを応援してしまったがばっかりに、政治的影響力を大きく損なってしまった人がいます。それが喜納昌吉さんです。喜納昌吉さんは沖縄を代表する伝説的なミュージシャンで、2004年から2010年にかけて参議院議員にもなりました。今でも積極的に政治に参加し、多少の影響力を持っていたのですが、今回、喜納昌吉さんが依田啓示さんを応援してしまったばっかりに、「喜納昌吉の政治オンチぶりはオワコンレベルだ」と思われ、一切の影響力を失ってしまったと思われます。どこかの自民党の候補者や元維新の候補者を推薦した方が、まだマシでしょう。よりによって沖縄を代表する「ネトウヨデマ野郎」を応援するなんて、そんなジジィの政治的発言は一切信用なりません。今回の沖縄県議選で、喜納昌吉さんの政治生命は完全に終わりました。これまで沖縄県知事選などにも挑戦してきた喜納昌吉さんですが、これからは完全なる泡沫候補のオジサンとして、誰からも見向きをされなくなってしまうことでしょう。
依田啓示さんは琉球ネトウヨ界の中心的人物である我那覇真子さんとネット番組の中で大喧嘩を繰り広げ、貴重なネトウヨ票の一部も失ってしまったと見られ、選挙の前半は「当落線上にいる」と考えられていましたが、あまり有効な選挙戦略が立てられず、これだけYouTuberであることを全面的に押し出しておきながら、選挙期間中に用意された動画は少ないこともあって、当選は難しくなってしまったのではないかと思います。沖縄初の釣り公園を作る、沖縄の送料が高い問題を解決する、スポーツ大学を作る、自動車減税特区を作るなどの公約をダラダラと述べる動画はありましたが、特別な仕掛けがあるわけでもありませんでした。最近は選挙戦略の一つに「YouTube」が取り入れられるようになりましたが、まだまだネットだけで議席を獲得できるほど甘い世界ではありません。何はともあれ、依田啓示さんが落選したことで沖縄県議会がネトウヨカルトに乱される心配はなくなりましたので、ここからはしっかりと仕事ぶりを見て、4年後、さらに良い人に投票していくだけです。
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