オリジナル 『筋肉は、どのように縮む?』
「筋肉は縮むことしかできない」
これは変わることのない事実です。
しかし、1括りに「縮む」といってもいくつかの種類が存在します。
今回は、大きく3つの筋収縮を解説していきます。
筋収縮については、動画で詳しく解説していく予定ですが、筋肥大の仕組みやトレーニング動画の解説でも、このあたりの話が出てきていますので、先にざっくりと紹介しておきます。(詳しい内容は動画をお楽しみに!)
筋収縮は、非常に複雑でなので、筋肉の長さの変化に絞って考えていきます。
■ 3種類の筋収縮をマスター
筋肉の収縮は、いくつかの種類がありますが、どの収縮も筋肉が中心に向かって縮むことに変わりはありません。
筋肉の収縮は『力と長さ』の変化によって分類されています。
・コンセントリック収縮:筋肉の長さを ”短くしながら” 力を発揮する
・エキセントリック収縮:筋肉の長さを ”伸ばしながら” 力を発揮する
・アイソメトリック収縮:筋肉の長さが ”変わらないまま” 力を発揮する
他にも分類できますが、実際のトレーニングで考えるべきは、上記の3種類です。
これだけでは、イメージしにくいので、ここからアームカール時の上腕二頭筋を例にそれぞれの特徴を解説していきます。
① コンセントリック収縮
コンセントリック収縮は『筋肉の長さを短くしながら力を発揮』します。
起始と停止が近づいていく収縮なので、縮んでいる感覚がイメージしやすいと思います。
アームカールでは、重りを持ち上げる時の上腕二頭筋は、コンセントリック収縮をしています。この収縮では、筋肉にかかる物理的なストレスは小さく、筋肉痛は起きにくいという特徴があります。
コンセントリック収縮は、動作を加速させる”モーター”のようなイメージです。
② エキセントリック収縮
この収縮は『筋肉の長さを伸ばしながら力を発揮』します。
アームカールでは、重りを下ろす時の上腕二頭筋は、エキセントリック収縮をしています。この下ろすというのは、「脱力」ではなく、「スピードをコントロールしながら」というニュアンスです。ジャンプの着地なんかでも、この収縮によって動作を減速し、関節にかかる衝撃を吸収しています。
この収縮では、筋肉にかかる物理的なストレスが大きく、筋肉痛が起きやすい、という特徴があります。(筋肥大の条件でも登場しました。)
エキセントリック収縮は、動作を減速させる”ブレーキ”のようなイメージです。
③ アイソメトリック収縮
この収縮は『筋肉の長さが変わらないまま力を発揮』します。
一見、動作は起きていないが、筋肉は力を出し続けている、という状態がアイソメトリック収縮です。
アームカールでは、肘を曲げた状態で重りを同じ位置でキープし続けていると、上腕二頭筋はアイソメトリック収縮をしています。この収縮では、筋肉にかかる物理的なストレスは小さく、筋肉痛が起きにくい、という特徴があります。
アイソメトリック収縮は、動作の加減速には関与せず、客観的には止まって見えます。
体力テストで行われる、握力や背筋力の計測、プランク(体幹トレーニング)などでは、このアイソメトリック収縮している状態になります。
■ 筋肉が伸びているのに”収縮”?
ここまで読んでも、いまいちイメージが掴めていない方もいると思います。
この筋収縮を分かりにくくしている犯人が ”収縮” という言葉。
収縮は「縮む、短くなる」という意味なので、筋肉の長さが「伸びながら」や「変わらない」ことまで”収縮”と言われるとわけ分からなくなるのです。
この件に関しては「収縮ではなく、筋活動で統一しよう!」なんて議論が起きるほどなので、『収縮』という言葉を物理的に捉えず、パッと見の長さの変化で考えてもらえればいいと思います。
・筋肉が縮んでいる → コンセントリック収縮
・筋肉が伸びている → エキセントリック収縮
・長さの変化がない → アイソメトリック収縮
ちなみに、これらの収縮名は、”コンセン”、”エキセン”、”アイソメ”、という感じでトレーニングの解説なんかでも使われるので、覚えておくと便利です。
書籍などによっては、コンセントリック収縮を「ポジティブ動作」、エキセントリック収縮を「ネガティブ動作」と呼ばれることもあります。
筋収縮を覚える際に「上げる動作=コンセントリック収縮、下げる動作=エキセントリック収縮」と覚えてしまうと、ケーブル種目などで例外が出てくるので、あくまでも「筋肉の長さの変化」で覚えることをおすすめします。
■ どの収縮を意識すべき?
通常のトレーニングでは、上げる動作(コンセントリック収縮)と下ろす動作(エキセントリック収縮)の両方が含まれた動作を行うことが多いと思います。
では、筋肉を大きくするには、どの収縮を意識すればいいのでしょうか。
トレーニングでは、バーベルやダンベル、または自分の体を持ち上げる種目が多いため「上げる動作(コンセントリック収縮)でトレーニング効果を得ている」と思ってしまいます。実際、使われる筋線維の数も多く、酸素の消費量も他の筋収縮よりも大きいため、上げる局面が辛いのは事実です。
しかし、通常のトレーニングで意識すべきは、下ろす動作(エキセントリック収縮)です。
エキセントリック収縮は、筋肉にかかる物理的な刺激が他の収縮に比べて大きい、簡単に言うと筋肉痛が起きるような刺激になるのです。
筋肥大の条件に出てきた”筋肉痛にする”という刺激は、ほとんどがエキセントリック収縮で起きています。トレーナーが「下ろしをもっとゆっくり!」と言うのは、このためです。
なので、トレーニングの際には『1秒で上げて、2秒で下ろす』くらいのペースで、エキセントリック収縮を丁寧に行うことが推奨されています。
□ トレーニングで筋肉は壊れない
トレーニングで「筋肉を壊す!」なんて言われたりしますが、実際はそんなに簡単に筋肉が壊れるようなことはありません。
確かにエキセントリック収縮時には、引き千切れるような感覚になるので、伝わりやすい表現ではありますが、多くの場合が筋肉が疲労している程度、または筋肉の機能が少し損なわれている程度で、痛みが出ているからといって「筋肉がボロボロになっている...」なんてことはありません。
「壊す」というイメージで重量を優先した無理なトレーニングにならないよう注意が必要です。
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今回は、筋収縮の種類を紹介しました。
普段行なっているトレーニングでも、どの局面でどの収縮になっているのか考えてみるのも面白いと思います。サクサク上げ下ろしするのではなく、エキセンをゆっくり行なってみてください。
また、実技の解説でもこの収縮名が出てきているので、覚えているとより伝わりやすいと思います。
では、また次回の記事で。