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令和時代のビジネスパーソンに贈る  自己修養のすすめ――北尾吉孝

一大インターネット総合金融グループ、SBIホールディングスを率いる北尾吉孝氏の新刊『人間学のすすめ』が間もなくリリースされます(Amazonで予約受付中)。仕事や人生を通じて「いかに身を修めるか」を一貫したテーマに置き、幼少期から慣れ親しんできた東洋古典を引き合いに現代社会の風潮を論じたり、自身のライフスタイルからリーダーとしての振る舞いや心構えを示唆したり、築き上げてきた仕事観・人生観を率直にまとめた随筆集です。今回は同書の「はじめに」より、発刊に込めた北尾氏の想いを紹介します。

■多忙な日々に書き綴った随筆集


「つれづれなるままに(無聊の慰めに)日暮らし、硯に向かひて、心に移りゆく由無し事(脳裏に去来する様々な雑多なこと)をそこはかとなく(とりとめもなく)書きつくれば、怪しうこそ物狂おしけれ」

前記は言うまでもなく、兼好法師が鎌倉時代に書いた『徒然草』の冒頭の文章です。
兼好法師が自身の経験や考えや逸話などを書き綴った、全244段からなる随筆です。

私は若い頃に『徒然草』を読み、700年近くも前に書かれたものがこれ程までに格調が高く洗練されたものであることに驚愕したのを覚えています。
また、同時に身の丈も弁えず、私もいずれ随筆でも書いてみようと思ったのです。

このことが契機となり、私は時々本や新聞、雑誌などを読んだりして、思ったり、考えたりしたことを書き留めたりブログにしてきました。

私も来年早々には72歳になり、中国宋末時代の朱新仲が唱えた「人生の五計」のうちの「老計」や「死計」を真剣に考える年になりました。

すなわち「老計」とは老後の生活や健康維持のことを考えることではなく、「老」の価値をいかに見出し、それを活かしていくかということです。
これこそがフランスの小説家アンドレ・ジイドの言う「美しく老いること」ではないかと思うのです。

「死計」はいかに死すべきか、ということですが、これは残された日々をいかに生くべきかということです。

このようなことを考えるべき年になりながら、私はまだSBIグループという事業グループの総師であり、事業を通じて世の為人の為に全力を尽し、一日4時間半の睡眠時間で奮闘努力しており、退屈さや寂しさなどを感じて「日暮らし」、書き物をする時間は全くないのです。

ただ、多忙を極める間のちょっとした時間に日々の生活の中で感じたり、思ったり、考えたりしたことを書き留めてきました。
それが長年の間に随分溜まりましたので、そのいくらかを、この度致知出版社のご協力が得られましたので、少しでも読者の良き気付きや刺激になればと思い上梓することにしました。

こうした形で私の長い間の経営者として、またベンチャー企業への投資家としての経験を「老」の一つの価値として御披露しようと思った次第です。
しかし、もともと浅学非才の上、十分に思索を積み重ねた書き物でもなく恥を承知での上梓だということをお含み置き下さい。

また、そのような形で様々なトピックで書かれ長く溜め置いたものですので、かなり昔のものも含まれています。
そこで読者の便宜を図るため森信三先生の人間学の要諦を記した名著『修身教授録』に倣って大きなカテゴリー、例えば、「人格形成、人間学」「仕事との向き合い方」「日本及び世界に目を向ける」といったサブタイトルごとに仕分けをしてあります。

■なぜ人間学が必要か


本書のタイトルを『人間学のすすめ』としたのは、今日まで私自身の人生の歩みを通じて、最終的に帰着するところは人間学だと実感しているからです。

陽明学を樹立した中国明代の思想家の王陽明が次の言葉を残しています。

「天下のこと万変といえども、吾がこれに応ずるゆえんは喜怒哀楽の四者を出でず」

まさに人生は千変万化で様々ですが、突き詰めれば、喜怒哀楽の4つを出ないのです。
これら4つが人生の全てと言っても過言でないでしょう。

人生いかに生きるかという学問が人間学ですから、人間学を学ぶということは、これら4つを正しくマネジメントする原理原則を学ぶことに繋がるのです。

この真理をもう少し違う角度から考えてみましょう。
例えば、歴史を学ぶということは、その歴史的事実の主人公の人物を学ぶということにほかならず、結局は人間学を学ぶことに至るのです。

ですから本書は、そのかなりの部分が人間学に関わった内容となっています。

また、本書には、私は自分の主体性を貫くという私の生き方が色濃く現れています。
つまり私の物の見方や考え方は極めて主体的です。
若い時から今日に至るまでそうするように訓練してきたのです。

時として読者の皆様も奇異に感じられる所があるかもしれませんが多様性を受け入れる中でそのような見方もあるのかと軽く流すだけでなく、それについて考えられるのが良いかと思います。
そうやって「読書」と「思索」を重ねるのが「人間学」の学びに役立つと思います。

最後にもう一つ、本書は内容が多岐に亘りページ数も多いので、1ページから順次読まれるのではなく、御自分が関心を持たれる項目を目次で御覧になり読まれることをお勧めします。
読まれて、もし得ることがあれば血肉化し、皆様方の人間学の日々の修養の一助に繋がれば私としては望外の喜びです。
                                                            (『人間学のすすめ』はじめに、より)

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『人間学のすすめ』北尾吉孝・著  定価2,200円(税込)