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秋のうた「平行世界の花野」

こんにちは!noteではご無沙汰しております。齋藤です。
今回はめずらしく?歌を。
ちょうど一年前、某短歌総合紙に出したものです。

 

平行世界の花野       齋藤芳生

百均の扇子二ヶ月でこわれたり扇子こわれて吹く秋の風
きりぎりす夜の教室に飛びこんで男(お)の子三人悲鳴をあげる
お母さんの声のよろしさ長男とその友だちを叱り飛ばして
すすきの穂ながく伸び揺れはじめたり保護者専用駐車場にて
きみたちの先生は鬼、時に神。今宵は中秋の名月をみる
テスト用紙の裏一面に描かれたるこれは平行世界の花野
偏頭痛にくるしみながら採点をすれば花野がいっせいに鳴る
目標平均点辛うじて上回り秋のテストに深く息を吐く
花咲けば実のなるように学習のフィードバックは簡潔であれ
翌朝は晴天、公孫樹の大木に逢いにゆくなり石段を登り
大きな木そのもののようなおじいさん今朝も境内を掃き清めいる
いまここにあることに善悪なくて陽にあたたまるどんぐり一個
埃茸踏んづけられて嬉しそう偽りのなき胞子を飛ばす
境内に差す秋の陽の透明にひとはこころをひたして帰る
一頭のボルゾイが橋を、いや川を、あふれる秋のひかりを渡る

齋藤芳生「平行世界の花野」 「梧葉」2021年秋号

もう10月が終わりますね。
みなさま、どうぞよい秋を。

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