ハルビン:異文化を生きた男の話
と言う、いつもながらセンスのない日本語題名をつけてしまいました。
この夏、尊敬する日本の友人に「フイチンさん」と言う漫画を紹介してもらって、この漫画が戦前ではなく1950年代に出ていたことを知って衝撃を受けました。
なんせ、戦後の日本は植民地などなかったかのように、「日本=同一民族論」がもてはやされていたように思っていたので。
まず「フイチンさん」の主人公が中国人(満洲族か漢族かは不明)の若い女の子。しかも、お金持ちの家の門番の娘という設定。出てくる人たちも、お金持ちから、貧しい人、日本人、ロシア人、馬賊、カトリック教会が運営する女学校の先生(シスター)などなど、多彩です。
それもあり、日本の植民地時代のハルビンについて知りたくて、この「ハルビン」を購入。実は、この本は、満州がロシアの植民地だった頃から始まります。こんなことも知らなかった私!
中国とロシアの関係。そこにある白人至上主義と白人に見下されつつ白人になりたい中国人。これは今の日本(アジア全体?)でも見られる現象だなぁ。。と思わされました。異民族結婚でも、ロシア人にとって中国人と結婚することは、marrying downと見られていましたが、中国人がロシア人と結婚することはmarrying upだったようです。。。(195)
意外とこの時代、帝政ロシアからの移民が、多くは鉄道の運営に関してアジアに来ていたようで、満州が事実上日本に占領されてからは、ハルビンにとどまる人もいれば、天津や上海にさらに移動して行ったり、中には長崎に一時逗留した人もいたり、思ったよりも人は流動的なんだなぁ、と思わされました。もちろん、ごく一部だとは思いますが。
ある男というのがドイツの貴族の血をひく人物で、リトアニアあたりに領地を持っていたりする人なのですが、彼は医者としてハルビンに行き、そこで中国の文化に傾倒し、中国人の若い娘(著者によると売春婦であったかもしれない、とのこと。また、彼女が漢人であったか満人であったかは不明だそうです)と結婚し、一人娘をもうけます。
妻は早くに亡くなってしまい、彼は男やもめとなるのですが、この娘も結局はスイスに行ってしまいます。彼女の子孫はいるのでしょうか。
中国とロシアのこの関係、そして後に日本も関わってくるのですが、は、とても面白かった!まだまだ知らないことが多すぎると思わせてもらえました。ただ、日本軍が来てからの満洲の話は、スッカスカなのが残念。まぁ、でも著者はドイツ語、ロシア語、中国語を駆使して書き上げたようなので、日本の資料にあたれずとも十分かもしれません。
もう少し、満州に関する本、読んでいきたいと思います。