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夏に海の風に当たると冬に風邪をひかない

海の思い出といえば、広島の海だ。

小学生の頃、長い休みになると東京から広島の祖父母の家に遊びに行った。広島生まれの父親は東京育ちの子どもたちに海を見せようと、呉線に乗ると必ず「海、海」と声を掛けてきた。遠くの方に低い山がいくつも並び、穏やかな海にカキのいかだが浮かんでいる。

夏は海水浴に出掛けた。祖父母の家は山の上にあったので、『かるが』という海水浴場まで出かけた。「かるが、かるが」と言っていたので、『狩留賀』という漢字があるとは意識していなかった。しかも今は整備され、「ロマンチックビーチかるが」と名前がついているらしい。ちょっと恥ずかしい・・・。

海水浴場は昔、第一かるがと第二かるががあり、お気に入りは第二かるがのほうだった。。第一かるがを通り越し、山の中へ入る。山道をどんどん歩いて奥へ進む。どんどこ進むと木々の間から海と第二かるがの砂浜が現れる。人が少なく、居心地が良かった。祖母の作ってくれたお弁当を食べたこと、母親が私たち姉妹の浮き輪を付けて取れなくなったこと、祖父も一緒に来て泳いでくれたことなど色々思い出した。

海ではオレンジ色のヒトデを見つけたり、波に揺られる透明のクラゲを見たり、打ち上げられている破れたクラゲを観察したり、父親がタツノオトシゴを見つけたりと、なかなか出来ない体験をした。おじがウインドサーフィンをしていた。どうしてサーフィンをやらないのか聞いたことがある。「広島の海は波がないからね」と教えてくれた。その時にサーフィンができる海と出来ない海があるのか、と知った。

様々な体験は色々なことを教えてくれていたのだな、と改めて気づく。

祖父母もなくなり、海に行くこともほとんどなくなったが、時々、旅先などで海に遭遇する。そんなときは「夏に海の風に当たると冬に風邪をひかないのよ」という祖母の言葉を思い出し、手を広げて風に当たり、一生懸命吸い込むようにしている。ホントかウソかわからないけれど、今でも大切にしていることのひとつだ。

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