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年末年始

(約800字)


 豪華なお節料理が用意されていた

 毎年のことで、喪中の悲しさを抱きながらも母は、「おもち」をついてあった

 今年は鏡餅を飾れない
 家族が食べる分の「おもち」は、冷蔵庫で待っていた

 弟の家族が実家にやって来て、みんなで食卓を囲んだ

 体調が悪い私の代わりに、弟は後片付けをした

 みんな ずっと笑っていた

 姪っ子は鼻歌を歌いながら、父のDIYのテーブルを運んだり、私が三つ編みをして後ろで髪をまとめているのを見て、自分も両方を三つ編みして「どう?」とニコニコしてみせた

 陽が落ちてから、母が寒い中、電気ストーブの灯油を運んでいた
 その背中が小さく見えて、腰を屈めて歩く姿が祖母に似ていて泣きそうになった

 重いものを持てない自分が歯痒く、布団を敷くのを手伝ってくれる父や母に感謝しながら床につく


 数日前、母は「生まれた家の家族は、誰も居なくなった」と話した

 私は親やきょうだいが居ない世界を想像出来ない‥‥というか、したくはない

 でも、その日はいつかやって来るのかもしれない

 夜、「年越しそば」は目が不自由な母に代わって、私が作った
 お節料理は、三分の一を3人で食べた

 三段のお重は、弟が仕事で関わっていて、味も見た目も満足な「おせち」だった

 
 隣家から頂いた外国の紅茶を淹れることにした

 「ものすごく美味しいお茶なんだって」

 「最高に一級品のお茶らしいぞ」

 父と母が交互に「ものすごい」いいお茶と言うので、湯を沸かした

 「ものすごく いい匂いがするね」

 「うん、ものすごく 美味しいね」

 「ものすごい美味いな」

 『ものすごい』を連呼して、どこが凄いんだか分からないまま、お茶の時間を楽しんだ

 紅茶のパッケージの外国語が、3人とも読めないのだった


 そんな幸せな時間を過ごしている


 まだ三段重のお節料理が、一セット、別に買ってあるという

 私が料理出来ないのを苦にしないためか、お正月はお節料理で済むようにしてくれてある


 優しい家族のために、できる限りのことをしたい


 母が笑っていられるように過ごしたい











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